うつ病で将棋が指せなくなり、休場を余儀なくされたプロ棋士の先崎九段。現役復帰を目指して後輩相手に練習対局をしたり、将棋連盟の新年行事である「指し初め式」に出席したりする日々を過ごしていた。ある日、精神科医の兄から「何か書いてみたらどうか」との提案が……。
羽生世代と言われる棋士のなかでも、最も早い11歳で奨励会に入会した先崎学九段。17歳でプロデビューし、1990年度のNHK杯戦では同い年の羽生善治を準決勝で破り、棋戦初優勝。2014年には九段に昇段している。 そんな将棋界の重鎮、先崎九段が昨年9月に突然将棋界から姿を消した。休場した理由は「一身上の都合」とのみ発表され、様々な憶測を呼んだが、じつはうつ病のために入院していたのだ。そして1年の闘病を経て、今年6月に対局への復帰を果たす。 エッセイの書き手としても知られる先崎九段はうつ病の発症から回復までの日々を新刊『うつ病九段』に綴っている。書籍の発売を記念し、本書の一部を特別に公開する。 ◆◆◆ いったいに、本書の内容のようなことは、はじまりの日を具体的に記すことは難しいのだろうが、私ははっきりとその日を書くことができる。それがはじまったのは、6月23日のことだった。 なぜ、私のようなずぼ
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