一度、夢が終わったことがある将棋棋士がいる。瀬川晶司五段。プロ棋士の養成機関である奨励会に中学生で入会するも、「26歳の誕生日を迎えるまでに四段昇段できない者は退会」という年齢制限の壁に阻まれ、プロへの道を閉ざされた人物だ。 それまでの人生すべてを懸けて目指してきた夢を終わらせた瀬川さんは、しかし今、プロ棋士として盤上での戦いの日々を送っている。史上初、サラリーマンからプロ入りした異色の棋士に「好きなことを仕事にする人生」について聞いた。 瀬川晶司五段 自分はプロになれるという「根拠のない自信」 瀬川さんが奨励会に入会したのは1984年、14歳のときだった。8年後、22歳でプロへの最終関門である三段リーグに入り、26歳の誕生日を迎えるまで、半年のリーグ戦を8回戦えるチャンスを得る。 「三段リーグに初めて参加するときは、みんなワクワクしていると思います。自分は、自分だけはプロになれると思って