山中さんのノーベル賞受賞はうれしいニュースだ。山中さんがiPS細胞を作る条件を4つの遺伝子にしぼりこんだ論文は、発表された直後に読んだが、アイデアといい、手法といい、これぞ科学とうならされるものだった。山中さんのこの研究は、着想の時点で、とても面白いものだったと思う。言われてみればなるほどそういうアプローチがあったかと納得させられるが、誰も考え付かなかった。幹細胞研究者はみな、うんざりするほど膨大な許可申請書類を書き、胚性幹細胞研究に時間をつぎこんでいた。胚を使わずに、体細胞を初期化することで幹細胞を作る可能性があることを多くの関係者が知識としては知っていたはずだが、きわめて困難な課題として、避けていた。山中さんは遺伝子発現に関するデータベースを駆使して初期化遺伝子候補を24に絞り込み、24個あれば初期化できることを確認したうえで、24個を1個づつ減らすという戦略で、4個にまで絞り込んだ。