■情報の海の心強い道しるべ アポロ11号以来といってもいいだろう。小惑星探査機「はやぶさ」の帰還は、宇宙開発関係としては異例の大ブームを引き起こした。宇宙科学研究所の立地する神奈川県相模原市や、東京・丸の内での帰還カプセルの展示には長蛇の列ができ、丸の内では、周辺商店街が一斉にはやぶさにちなんだ商品を売り出すという現象も起きた。 そのはやぶさも、2003年の打ち上げ時には、一般からの注目はごく僅(わず)かだった。05年に行った、素晴らしくエキサイティングな小惑星イトカワへの着陸時にも、現在ほどの関心は集まらなかった。 はやぶさは、どのような経緯で開発され、いかなる旅の過程を経て地球に戻ってきたのか−『小惑星探査機 はやぶさの大冒険』は、はやぶさの全貌(ぜんぼう)を手堅くコンパクトにまとめている。 著者は、週刊誌の長期連載「メタルカラーの時代」で、日本の技術の現場を幅広く取材し、分かりやすい