生成系AIの言語モデルGPT-3のように、生活を豊かにする新たな技術的ブレークスルーの芽が素材研究の分野から誕生した。今年4月に理化学研究所が発表した力学極性ゲルだ。今後ミクロの領域においても力の指向性を簡単に制御できるようになる。同・創発物性科学研究センターの石田康博チームリーダーは話す。 「力学極性ゲルには主に2つの性質があります。ひとつは水平方向の力に対し、左右で異なる弾性率を示すこと。ゲル全体を左右に振動させると、片方だけが大きく揺れます。もうひとつは、垂直方向から1か所に円柱を押し当てると、左右非対称のひずみが生じること。ゲル上にボールを自然落下させると、ボールは前者の振動が少ない方向へ必ず跳ね返ります。つまり、力学極性ゲルを使えば力がかかる方向を任意でガイドできるのです。しかも、どれだけ小さく切り刻んでも、この性質は損なわれません」 実はこれまで人類はギアや爪などのパーツの組み