大原における極めて信じがたい「不思議な」体験の一つが、研修医教育のために行われていたCPC (clinico-pathological conference 臨床病理カンファランス)だった。 世界中どこに行っても、CPC は、「討議者が臨床と病理担当の二手に分かれ、臨床側が『死後の解剖等により明かされた病理側の情報』にアクセスすることなしに、『生前の経過・データ等の臨床側の情報』のみから論理的に『正解』を推測した後、病理側が種明かしをする」というフォーマットで行われるのが普通である。臨床における論理的思考を学ぶことが目的であるからこそ、昔からCPCでは、臨床担当者は病理所見にアクセスすることなく議論を進めるというフォーマットが採用されてきたのである。 ところが、大原のCPCにおいて臨床担当研修医の指導役をさせられた際、研修医が「病理医と密接に連絡をとりながらプレゼンテーションの準備をしてい