■要旨 個人消費は力強さに欠ける状況が続く。この要因の1つには、実質賃金の伸び悩みがある。しかし、賃金は改善傾向を示す一方で、依然として消費は低迷している状況を見ると、必ずしも「賃金が上がれば消費も増える」わけではなさそうだ。 消費が活性化しにくい理由には、まず、(1)消費者全体で経済的不安が広がっていることがある。若い世代ほど厳しい雇用環境にあり、少子高齢化による社会保障不安もある。高齢者でも年金受給額の引き下げなど制度変更による生活防衛意識の強まりもあるだろう。 また、(2)高齢化の進行で高齢世帯の存在感が増している影響もある。高齢世帯は消費額が少ない上、賃金増の影響も受けにくい。 さらに、(3)消費社会の成熟化の恩恵を受けて、支出を抑えても質の高い消費生活を送ることができること、また、それに伴う(4)価値観の変容もある。シェアリングサービスの登場でモノを買わなくてもすむ環境が広がり、