「来年の今月今夜、この月を僕の涙で曇らせてみせる」舞台やドラマでお馴染みのこのセリフ。言わずと知れた『金色夜叉』の名シーンだ。作品の舞台である静岡県熱海市の海岸にはその場面を再現した主人公・貫一と許嫁だったお宮の銅像があり、観光名所となっている。最近、この銅像に異変が起きた。フリーライターの清水典之氏が報告する。 * * * 観光地・熱海を象徴する存在とも言える貫一お宮の像に、今年3月、1枚の金属プレートが設置された。この縦10cm×横40cmという、小さなプレートが物議を醸している。 そこには日本語と英語で、「物語を忠実に再現したもので、決して暴力を肯定したり助長するものではありません」と書かれている。貫一がお宮を足蹴にするシーンを銅像で再現したことについて、“弁解”しているのだ。 それが『金色夜叉』の名場面(*)と知る者からすれば、違和感を持つのが普通である。30年以上前(1985年)