盤面の駒の動きが全く頭に入らない――。昨年初夏、将棋棋士・先崎学九段は混乱の中にいた。うつを発症していたのだ。アマチュアですら簡単に解ける詰将棋も解けない。「もう将棋は指せないかもしれない」。そう思い詰めることもあった。かつて「天才」とたたえられた棋士の、喪失から復活までの軌跡を追う。(ノンフィクションライター・崎谷実穂/Yahoo!ニュース 特集編集部)
本書は筆者である先崎学さんがうつ病になる事からスタートし、その後回復するまでの過程を極めてわかりやすく記述した本だ。 僕も一応医者であり元同僚にもうつを発症した人がいたので、多少はうつについて知っているつもりではあったのだけど、恥ずかしながらこれを読むまでうつ病の事を何もわかっていなかったといっても過言ではない事がわかり、愕然としてしまった。 それぐらいに衝撃的な本なので、ぜひ皆様も読まれる事をオススメする。非常に読みやすいので、たぶん誰にでも読めるはずだ。 うつ病は決断力が落ち、退屈を感じなくなる病気 先崎さんによると、うつ病になるとこんな感じになるのだという。 「うつ病の朝の辛さは筆舌に尽くしがたい。あなたが考えている最高にどんよりした気分の10倍と思っていいだろう。」 「まず、ベットから起きあがるのに最短でも10分はかかる。ひどい時には30分。その間、体全体が重く、だるく、頭の中は真
※本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています 2017年は将棋界にとって幸せな一年だった。藤井聡太七段の破竹の快進撃。羽生善治竜王の永世七冠獲得。 その一方で、表舞台からひっそりと姿を消していた棋士もいた。 先崎学(せんざき・まなぶ)九段。1970年生まれ、プロ入りは17歳。異才ひしめく「羽生世代」の一人。 「先(せん)ちゃん」の愛称で知られ、ユーモアにあふれる明るい人柄と、酒や博打を愛する“昭和の将棋指し”の空気を伝える一人として、棋士仲間やファンから親しまれていた。その文才から、週刊誌での連載や著作も数多い。 本書『うつ病九段』は、そんな先崎九段がうつ病を発症し、棋士の生命ともいえる公式戦を休場していた一年間の出来事を自ら綴ったものである。 うつ病は脳の病気 藤井ブームが沸き起こる少し前。既に忘れている人も多いだろうが、将棋界は文字通りのどん底にあった。人間よりも強くなっ
天才棋士がある日突如、表舞台から姿を消し、世間をざわめかせた。「何かに悩んで死ぬのではない。死にたがるというのが、うつ病の症状そのものなんです」――うつ病の真っただ中で、彼は何を見て、何が起こっていたのか。『うつ病九段 プロ棋士が将棋を失くした一年間』を著した先崎学九段が明かす、凄絶な「うつ抜け」体験談。 今日より明日がつらい すこしまえから予兆はあったのですが、自分が本格的におかしくなっているな、と感じたのは、昨年7月の順位戦の初戦でのことです。若手を相手に負けてしまったのですが、それが問題ではない。頭がフワフワして、思考がまとまらない。読みもせず、ふらっと指してしまう。 将棋の内容すら自分では判断できません。でも、これはめちゃくちゃだなということだけがわかるのです。 【こう語るのは、棋士の先崎学氏(48歳)だ。羽生世代と言われる棋士の中でも最も早い11歳で奨励会に入会、永世棋聖・米長邦
将棋の先崎学九段と言えば、「週刊文春」などに連載をもつ「将棋界の広報マン」的な存在の棋士として知られた。小学5年のときに米長邦雄永世棋聖門下で奨励会入会、17歳でプロデビュー。酒とギャンブルをよくする豪快な性格で、ファンに愛されてきた。「そういえば最近あまり名前を見ないな」と思っていたら、本書『うつ病九段』(文藝春秋)の刊行を知り、驚いた。以前、日本将棋連盟に出入りし、元気なころの先崎さんを知っている評者にとって、驚愕の出来事。発症から回復までの日々を本人がつづった手記だ。 先崎さんが体調を崩したのは2017年6月23日、前日が47回目の誕生日だった。疲れが取れず、頭が重い状態が数日続いた。「不正ソフト使用疑惑事件」の収拾や自身がかかわった将棋がテーマの映画「3月のライオン」の取材対応などに追われ、多忙な毎日が続いていたという。 7月に入ると、対局でも集中力がなくなり、どれも無残な惨敗。不
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