その治験の動画を札幌医科大学で初めて観た時の衝撃は忘れがたい。 「右手動きますか?」 「左足動きますか?」 そう医師から尋ねられたベッドの男性は手足を動かすことができなかった。事故で脊髄を損傷し、首から下の四肢が麻痺していたからだ。男性はいわゆる“寝たきり”の状態だった。 尋ねられたあと、男性はある点滴を投与された。 すると、その翌日、劇的な変化が起きた。それまで麻痺していた手足がいきなり動きだしたのだ。それどころか、その日のうちに自分で車椅子を操作するという段階にも至った。 半年後、男性は自分の足で退院していった。 動画に収められていたのは、まるで魔術のような治療だった。 この医療を実現したのが、本望修・札幌医大教授だ。本望氏は、「間葉系幹細胞」という患者自身の細胞を使うことで、自己治癒力を引き出す治療を導き出した。 脊髄損傷は、不慮の事故などで誰もが突然見舞われる可能性があるものだ。国