トヨタ生産方式(TPS)は、製造業をはじめ様々な業界に業務改善手法として広く取り入れられている。そのTPSを確立した故・大野耐一氏(元副社長)に直接教えを受けて学び、次代に伝えられる人材は今やトヨタ社内でも経営幹部クラスの一握りしか残っていない。 一方では、グローバル化や労働管理のコンプライアンス強化など、生産現場を取り巻く状況が大きく変化している。ともすればTPSの表面的な部分だけが受け継がれ、根本的な思想の伝承がおざなりになる可能性も増している。 そこでトヨタ自動車で技術・生産を極めた人だけに与えられる技術最高職「技監」を務める林南八氏に、大野氏の思い出を振り返りつつ、人材育成の危機感とあるべき姿を語ってもらった。 (聞き手は西 雄大=日経情報ストラテジー) 大野さんは、我々に無理難題を言った瞬間から、ご自身も考えていた。だから翌日必ず見に来られた。「何じゃ、これは」と言って怒られるこ