非正規社員、失業、高齢化、病気――。いま、奨学金や住宅ローンなどの借金返済に困る人が増えている。明るい未来を担保にして借金が出来る時代は終わりつつあるのか。AERA 2017年4月3日号では「借金苦からの脱出」を大特集している。 奨学金の返済が重く、人生設計を変えざるを得ない若者が増えている。背景にあるのは学費の高騰や仕送り額の激減、非正規雇用への就職などだ。 * * * 学生生活やアルバイトに関する質問に、にこやかに応じていた大学院生の吉川隆さん(仮名、24)の口元が、にわかに緊張した。家族のことを尋ねたからだ。 一見おしゃれで“意識の高い”、今どきの男子に見える。ただ身なりに人一倍気を使うのも、自分の暮らしぶりを悟られたくないという思いからだと明かす。友人を家に呼ぶのも、昔から苦手だった。 「奨学金を借りられたのは、正直嬉しかったです。それまで自分で人生を選択できたことっ