平安後期から戦国時代にかけて、政治・社会の中心にいた中世武士。日常的に戦闘や殺生を繰り返していた彼らのメンタリティーは、『葉隠』『武士道』で描かれた江戸時代のサラリーマン的な武士のものとはまったく異なっていた。史料に残された名言、暴言、失言を手がかりに、知られざる中世武士の本質を読みとく画期的論考。
2015年の春のこと。 わたしはまだ青木杏樹ではなく、ただ趣味で小説を書いている人でした。毎日毎日、400字詰め原稿用紙を20枚ワンセットを消費しては、文房具屋に買いに行きました。帰宅するとまた明け方まで20枚消費し、日が高くなる頃には買い足しに行く日々が続きました。 小説とは応募するもの、小説とは他人に読んでもらうもの、という考えがわたしにはありませんでした。 わたしの中には小さな世界がごまんとあり、その世界で生きている人たちはたえず呼吸をしていて、畑を耕し、水を飲み、作物を売ったり買ったりしていました。ときには殺し合って世界は消えてしまうこともありました。そうした流動する世界線がいくつも走り、絡み、まじり、繰り返す、衝動にも近い意識と妄想がするすると動くものですから、歴史をつむぐように彼らの証をのちのちまで残せないものかと考えたのがどうもわたしの執筆の原点のようです。つまり応募する、評
例えば、書評のページ。全部架空の本でね。実在しない本の紹介っていうのは、すごく最初からあったアイディアで、いまだにやりたい気が残ってる。 やってる時は知らなかったけど、スタニスワフ・レムとか、ボルヘスがやってるでしょ。そういう細かいアイディアはたくさんあって、架空のヒット・チャートとかさ。 そういう前から持ってたアイディアをどんどん入れてやったわけ。基本的に嘘のつけるメディアだということもどんどん利用した。 ちょっとなんていうのかな、儲かってる業界ってさ、自由がきくでしょう。何やっても文句言われないんだよね。それで図に乗って毎月出しまくった。結局『Jam』は十何冊か出たね。上いくとあんまり嘘つけないでしょ。 — 高杉弾『週刊本38 霊的衝動 100万人のポルノ』(朝日出版社)第1章「印刷ポルノの黄金時代」の中「『Jam』をつくっていた頃の話」 高杉弾 @takasugidan_bot X-
こういう本がある。 大豆と人間の歴史―満州帝国・マーガリン・熱帯雨林破壊から遺伝子組み換えまで 作者:クリスティン・デュボワ発売日: 2019/10/23メディア: 単行本 人類が初めて手にした戦略作物・大豆。 その始まりは、日本が支配した満州大豆帝国だった。 サラダ油から工業用インク、肥料・飼料、食品・産業素材として広く使われ、 南北アメリカからアフリカまで、世界中で膨大な量が栽培・取引される大豆。 大豆が人間社会に投げかける光と影、 グローバル・ビジネスと社会・環境被害の実態をあますところなく描く。 人間が食べる主要な農産物の時間的、地理的な拡大の歴史や、その農作物が持つ性質については一般教養として知っていることが楽しいものであり、そういう点で十分満足のいく本ではあったけど…冒頭のところで、ちょっとアレな話が描写されていた。ペンシルバニア在住の学者から見たら、こういうアジアの起源論争は
4/9毎日新聞書評欄で磯田道史氏が「数年前まで、忍者はそもそも実在するかで歴史学が揺れていた」と書いてて、へー、そういうもんなのかのう…と驚く。 まあ、氏がまさにその研究者の一人なので「俺がブレイクスルーしたんだぞエッヘン」的な意味合いもあるのかもしれんけどさ。 pic.twitter.com/gEzpj14H2F— gryphonjapan (@gryphonjapan) 2017年4月9日 あ、記事公開されてるhttps://t.co/cNwtvow16K 「忍者の研究はこれまで進んでいなかった…私が岡山藩の分限帳で伊賀者の名前を割り出し、…先行研究が本当に少なかった。ところが、ここ数年、急速に進んでいる。五年ほど前までは歴史学も忍者が実在するかで揺れていた…」— gryphonjapan (@gryphonjapan) 2017年4月9日 ひっジョーに困ることに、以前はどの新聞社も書
野球本はワインと似ている。 以前出た本を棚で寝かせている内に、熟成されて味に深みが出る。 例によってぶらりと本屋に出かけたら、青・赤・緑の見慣れた色使いの「辻発彦 埼玉西武ライオンズ新監督就任」という帯が巻かれた新書を見つけた。2012年8月発売の一冊が野球界の動きに合わせて、5年後にまた生き返る――これもまた野球本の魅力だ。 それにしても、あの守備の名手・辻が西武監督として戻って来るとは感慨深い。 自分は少年ジャンプで『キン肉マン』の連載が始まり、所沢で西武ライオンズがスタートした1979年生まれの埼玉出身。いわば西武線に乗って遊びに行き、テレビ埼玉で夕方からの全日本プロレスとライオンズアワーを観て育った世代である。当時の巨人は憧れの東京のチーム、西武は地元の自慢のチームという感覚。いわば辻は俺らのヒーローだった。 気が付けば、あの頃のスーパースターたちが続々と監督として現場に戻ってきて
1912年、古本屋業を営んでいたウィルフリッド・ヴォイニッチは、イタリアの寺院で奇妙な本を見つけた。 そこには、どこの国のものでもない言語がびっしりと書き記されている。文字に添えられた植物のイラストもまた、現実の世界には存在しないものばかり。 放射性炭素年代測定によると、15世紀に書かれた文書であるらしい。だが、発見から100年以上が経った今も、何が書かれているのかは不明のまま。世界の大いなる謎として語り継がれ、オカルト的な関心を集め続けてきた奇書。 それが「ヴォイニッチ写本」である。 これまで何度も「解読に成功した!」という報告がなされてきた。しかし、しばらくすると「あの研究結果は間違っている!」「今度こそ解読した!」などという報告が別のところから流れてくる。情報が錯綜し、一向に真相のつかみどころのない謎多き文書である。 しかしなんと、そんなヴォイニッチ写本に関する最先端の研究を行う人物
なぜ、いま炭鉱なのか――「負の遺産」を超えて 嶋﨑尚子×熊谷博子 映画『作兵衛さんと日本を掘る』公開記念対談 文化 #作兵衛さんと日本を掘る 2011年5月、炭坑画家・山本作兵衛の遺した絵や日記など697点が、日本国内では初めてユネスコ世界記憶遺産に認定されたことは記憶に新しい。自身炭坑夫だった彼が生涯に描いた絵は実に2000枚にのぼるといわれている。 山本作兵衛の仕事は、いったい今に何を訴えかけようとしているのか。5月25日より上映が始まるドキュメンタリー映画『作兵衛さんと日本を掘る』の公開を記念して、『炭鉱と「日本の奇跡」』(青弓社)の共編著者である社会学者の嶋﨑尚子氏を迎え、本作監督の熊谷博子氏と存分に語り合ってもらった。(取材・文 / 萩野亮) 山本作兵衛氏 熊谷 『炭鉱と「日本の奇跡」』を拝読しました。一般的には終わったと思われている炭鉱ですが、奥深い、今につながる新しい視点を感
週刊ポスト(3月15日号)誌上での井沢元彦氏の公開質問状に対して、私が今週発売の29日号で反論した。これに対して評論家の八幡和郎氏がまたまた感想をアゴラに寄せている。 呉座 VS 井沢:歴史学者だけが歴史家なのか? 上記記事で八幡氏は私の反論文について「素晴らしい出来である」と述べている。お褒めいただいて恐縮だが、八幡氏は以前にアゴラ上で発表した記事で そして、井沢氏は「安土宗論八百長説」、つまり、信長の前で浄土宗と法華宗の間で行われた宗論について信長が最初から法華宗を負けさせるつもりだったという通説が自分の問題提起をきっかけに学説も修正されたことを指摘しているが、これには一理あるだろう。(「週刊ポスト」で井沢元彦氏が呉座氏に公開質問状) と述べている。井沢氏の主張を鵜呑みにして学界の通説が一蹴されたと八幡氏は思い込んでいたわけだが、一蹴されていないことは私が週刊ポストで指摘した通りである
お好み焼きの物語 執念の調査が解き明かす新戦前史 作者: 近代食文化研究会出版社/メーカー: 新紀元社発売日: 2019/01/19メディア: 単行本この商品を含むブログを見る内容紹介 「ちょっと気分いいね。お好み焼きが東京下町生まれってのは!」 ビートたけし談 調査期間5年以上、調査資料2500冊以上、執念の調査がお好み焼きの歴史を書き換える。 ・お好み焼きは明治の末に東京下町で生まれた ・ソース焼きそばはお好み焼きの一種 ・人形焼や鯛焼がお好み焼き誕生に関係 ・幻のお好み焼き「エチオピア」「寄せ鍋」「籠の鳥」 ・世間を震撼させたお好み焼き死亡事件、桃色遊戯事件 ・お好み焼きに影響を与えた「洋食屋台」とは ・間違いだらけの日本ウスターソース史 ・戦前のウスターソースの主原料は醤油 ・現在のもんじゃ焼きは戦前には存在しなかった ・麩の焼はお好み焼きとは関係ない 話題にもなっているし、個人的
実話BUNKAタブー2023年2月号 12/16発売 通常毎月16日コンビニ・書店で発売 特別定価670円(税込) ▼渡辺徹の早すぎる死は肥満体にとって他人事じゃないデブは自分も周りも地獄▼ひたすら減税を叫ぶ社会インフラの維持コストに気づいていないバカたち▼現役長野県議の丸山大輔容疑者 妻殺害が疑われる好色サイコパスの半生▼「財務」で1000億円以上 統一教会と違い細く長く永遠に搾取し続ける創価学会カネ集めの実態▼秋篠宮さまに「私のことは話さないで」と箝口令 日本とはほぼ断絶もコネを使い倒す圭さん眞子さん夫妻の厚顔人生▼やりがい搾取で若手芸人を喰い潰すM-1 吉本が手放したくない「金のなる木」の汚い裏側とは ほか ●『ロマン優光の好かれない力』連載中 佐川一政は世間にどう受け入れられていたのか 実話BUNKA超タブー2023年1月号 コンビニ・書店で12/2より発売中 偶数月2日発売(次号
この2月から異様な売れ行きを見せている文庫本がある。 『仙境異聞・勝五郎再生記聞』 (岩波文庫)。江戸後期の国学者、平田篤胤(ひらた・あつたね 1776-1843)による「天狗にさらわれて帰ってきた少年へのインタビュー」の記録だ。なぜ今、天狗少年の話? 篤胤の研究者でもある日本思想史家の子安宣邦さんに聞きました。 【写真】なぜか売れている『仙境異聞』の校訂に使われた貴重な和本 ◆ ――子安さんが校注(校訂と注釈)した『仙境異聞』がツイッターを中心に大きな話題になり、相継いで増刷されるほどの売れ行きをみせています。 子安 いやあ、これはたしかに異常なことですね。「人の魂はどこへ行くのか」をテーマに記紀神話などによって考え続けた国学者篤胤の主著は『霊の真柱』(たまのみはしら)で、『仙境異聞』はその篤胤の著書としても風変わりなものです。言ってみれば、学者によって記録された「異界通信」みたいなもの
おっぱいの本です。 ポルノは無い。 By School of Fontainebleau formerly attributed to Frans Pourbus formerly attributed to François Clouet - Artiste anonyme, Public Domain, Link 猫とおっぱい しばらく前に読んだ本にこのようなことが書いてあった。 PVを取るのは猫とおっぱいなんですよ! 藤代 裕之. ネットメディア覇権戦争~偽ニュースはなぜ生まれたか~ ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか (光文社新書) 作者:藤代 裕之光文社Amazon 薄々感じていたが、あらためて言われると「確かに」となる。はてなブックマークを見ていても、猫やおっぱいに関する記事のブクマが凄い勢いで伸びていったことが何度もある。我がブログに足りなかったのは「おっぱい
中世ヨーロッパの書物に描き足された「ココ注目!」のマーク…矢印の概念がない時代の工夫いろいろ 現代において「矢印」は一般的に使われていますが、その概念が生まれたのは17〜18世紀ごろ、世界に広まったのは19世紀と言われています。 ヨーロッパ中世の書物では、「ここが重要」「テスト範囲」のような注意書き加えたいときは、指を差したリアルな手を描くことが多かったようです。 絵心あふれる、当時の書物をご覧ください。 Notes On The Fields Of Medieval Books オーソドックスな指差し。現代のアイコンに近いですが、袖をしっかり描写するのが当時の特徴。 注意書きが複数で距離があるときは、ニョキーっと指を伸ばします。矢印なら違和感がないのに……。 指を伸ばすのが不自然ならタコの足で代用。注目度は落ちるかも。 頭が手、体はドラゴン。 画力が高いと絵本のようなことに。 なぜか横顔
マーク・ザッカーバーグやビル・ゲイツといったビジネスリーダーたちから絶賛され、世界的ベストセラーとなった「サピエンス全史」。その続編となる「Homo Deus」は、既に発売されているが、邦訳版はいまだ刊行されていない。 欧米で既に議論を呼んでいる本書を、落合陽一が邦訳に先立って徹底批評。「東洋的発想」がいずれ世界を席巻すると断言する落合が、話題の未邦訳本から読み解く“日本の勝ち筋”とは?(後編は3月4日公開) はじめに断っておくと、僕は歴史家であるユヴァル・ハラリという著者が好きです。前著「サピエンス全史」は一気に楽しく通読しましたし、その続編で歴史から未来へとベクトルを急転換させた「Homo Deus」の刊行も楽しみで仕方ありませんでした。 読み終えた率直な感想は、「西洋的個人主義の更新の必要性を感じる一冊」というものです。批評性を持って読むと我々と西洋的個人主義の差を認識することのでき
舞姫の主人公をボコボコにする小説が明治41年に書かれていたので1万文字くらいかけて紹介したいと思います。 舞姫の主人公を殴れば解決するのでは? 冒険旅行ブーム 島村隼人、エリスに刺されそうになり豊太郎を殴ることを決心する 舞姫との差異 ハイカラを討伐しよう アフリカ人と帰国しよう 世界統一ブームがあった 豊太郎廃人となる 舞姫のために 追記 舞姫の主人公を殴れば解決するのでは? 森鴎外による舞姫っていう小説がある。舞姫の内容を知らない人のためにあらすじを書いておこう。 子供の頃からずっと勉強してた太田豊太郎は22歳になると国費でベルリンに留学、ところがヨーロッパの文化に触れ近代的自我に目覚めてすごい苦悩をする。色々あって豊太郎は踊り子のエリスと仲良くなるんだけど、ついでに無職になってしまう。親切な友達の紹介で職をゲットしたらエリスが妊娠、なんだかんだでロシアへ仕事に行くことになる。エリスは
青森太郎(ソウマ シンキチ) @aokomaki 「台所道具の一万年」の一部(山口昌伴「台所の一万年」2006年 農文協より)。余りにも素晴らしい図なので、いけないと思いながら一部を紹介。すべてを知り尽くしていないとこれだけのものは作れない。こんな教材を使って授業したら、子供達も理解が進むだろう。 pic.twitter.com/02OYrUM34Y 2016-10-25 21:05:04
kenzee「今さら「定本・風俗営業取締りー風営法と性・ダンス・カジノを規制するこの国のありかた」永井良和(河出ブックス)を読んだ。日本の風俗営業を取り締る風営法、正しくは「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律」を巡る歴史と問題系を一冊にまとめたもの。無論、近年の「クラブ規制」問題にも触れている。法律にはマッタク無知はボクだけど、普通に「ラブホテルとシティホテルを分類する基準」とか近年、爆発的に増殖している無店舗型風俗、ホテヘルやデリヘルはナゼ認可制ではなく届出制なのかとか2015年の風営法改正で「ダンス」が法律の条文から消えたってんで音楽関係者快哉をあげたワケだけど、その代わり「遊興」というそれまで風俗取締りになかった概念がでてきて余計にどうなの的な状況のクラブ規制問題とかいろいろ面白い本でした。そこでね、ボク、新しいビジネスを考えたの! 聞いてくれる?」 司会者「(ハ、ウサン
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く