紫色の培地の上に群がる黄色い大腸菌。食中毒の原因ともなるが、大半の菌株は有益だ。人間の腸にすみつき、ビタミンKやB12を作ったり、病原菌を撃退したりしてくれる。PHOTOGRAPHS BY MARTIN OEGGERLI 多種多様な微生物から成る「微生物叢」(マイクロバイオーム)の研究は比較的歴史が浅く、本格的に始まってから、まだ15年ほどしかたっていない。そのため、これまでの研究の大半が予備的で小規模なものだったといえる。科学者は微生物叢と疾患との間に一定の相関を見いだしてはきたが、膨大な数の微生物の集まりと、それらが宿主である人間に及ぼす意味については、いまだ明確な因果関係を伴う結論を引き出せてはいない。 微生物の数自体は、気が遠くなるほど膨大だ。平均的な若い成人男性の場合、主なものを挙げただけでも、大腸に38兆個、歯垢に1兆個、皮膚に1800億個の微生物がいると考えられており、これは