『機動戦士ガンダム』の生みの親であり、日本を代表するアニメーション監督・富野由悠季氏。富野監督はなぜ次々とヒット作を生みだせるのか。そこには「チーム」のポテンシャルを引き出すという意外な演出法があった。富野監督の密着ドキュメンタリー映像を演出してきた中西朋氏がリポートする――。(第2回) スタッフの力を引き出す! 富野監督のコミュニケーション術 「このシーンについて悩みに悩んで答えが出なくて禿げちゃった」 「爺ちゃんもいよいよ才能の限界かもしれない」 これらは富野由悠季監督が、スタッフを集めた制作会議で頻繁に語る自虐ネタの例です。初めてその姿を目の当たりにした時、私は残念な気持ちになりました。 私にとって富野由悠季監督は、アニメと実写の違いこそあれ同じ映像の世界にいる伝説の演出家であり、雲の上の存在です。だからこそ富野監督にはどんな時もカリスマ的なリーダーでいてほしかったのです。なぜ富野監