日本はお金が尊ばれる社会になってきている。幸せもお金で計られる時代なのだという言辞を、巷でも、マスコミの議論からも聞く。本当にそうなのだろうか。金銭中心の発想は少子化対策にも影響していると思える。筆者を含めて多くの研究者が、育児と仕事の両立度、男性を含めた働き方の見直し、育児の喜びの促進、などが少子化対策の基本であると主張してきても、実際に子供を持つことの障害として経済的負担をあげる親が多いこともあいまって、効果の怪しい育児手当の増額というような金銭本意の政策が少子化対策の中心にすえられたりする。問題は金銭では簡単に計れない要因が人々の行動を支配している点である。もちろん金銭面が重要でないわけではない。経済学者も、そして社会学者である筆者も、結婚・育児の機会コストには着目してきた。結婚や育児により、離職や転職を余儀なくされ将来にわたって失う収入のことである。実際育児と就業継続の両立をより容