「マンガと差別」 現代風俗研究会『現代風俗 93』1993年1月 はじめに 現代風俗研究会の今年度のメインテーマは「マンガ」。マンガとゲンプーケン。よくわかる組み合わせだ。クリープとコーヒーのようによくわかる。しかし、私にいただいたテーマである「マンガと差別」となると読者諸氏にはわかりにくいかもしれない。私も二十年前ならまったくわからなかっただろう。しかし、今はよくわかる。本書の編集者には、現在の「差別!」という観点からなされるマンガへの異議申し立てに違和感があったのだ。 私は、マンガに対して「差別だ!」という異議申し立てがなされることを全面否定しようとは思わないが、最近反差別運動の立場からなされるさまざまな表現への「差別!」という抗議の内容には少なからぬ違和感をいだいている[(1)]。その違和感というものは、こんなことだ。いまどきの人で、差別と聞いて良いことだと思う人は少ない。たいていは