発足当時は一部ウォッチャーに注目されるだけだったが,あれよあれよという間に全国紙に何度も登場しついには流行語大賞にまで影響を及ぼすようになった排外主義団体「在日特権を許さない市民の会」。それをめぐっては多くの言説が飛び交ってきたが,実は本格的な学術研究は殆ど現れていなかった。本書『日本型排外主義――在特会・外国人参政権・東アジア地政学』は在特会に関する初めての本格的研究であり,従来の在特会理解に修正を迫るものである。日本型排外主義―在特会・外国人参政権・東アジア地政学―作者: 樋口直人出版社/メーカー: 名古屋大学出版会発売日: 2014/02/22メディア: 単行本この商品を含むブログ (9件) を見る 本書の構成は次の通り。プロローグ(1-7頁)序章.日本型排外主義をめぐる問い(9-28頁)第1章.誰がなぜ極右を支持するのか――支持者像と支持の論理(29-48頁)第2章.不満・不安で排
重要な告知とは本の出版についてです。 いよいよ今週発売となりました。 講談社ブルーバックス 「基準値のからくり~安全はこうして数字になった~」 村上道夫、永井孝志、小野恭子、岸本充生 著 税込み994円です。 http://www.amazon.co.jp/dp/4062578689/ref=cm_sw_r_tw_dp_WG1Mtb03D9WW0 安全に関する本としては、類を見ない面白い本になったと思います! この本は巷に良くある、 〇〇は安全か危険か、ということを論じた本ではありません。 私たちの安全を守る基準値というものは いったいどんな風に決まっているのか? その根拠を探ってみると、それは純粋に驚きの連続であって、 知的好奇心をビリビリ刺激する新しい世界が広がっていた! という本なのです。 例えば、お酒はなぜ20歳からなのか? 大人よりも子供の方がアルコールの害が 出やすいことは科学
ワークライフバランス・カフェの活動で知り合った方に薦めて頂いて、「家事労働ハラスメント」という本を読みました。この本は、本来は癒しの営みであるはずの家事(育児、介護等)を、「単純労働」と咎めたり、あるいは「母親にしかできない神聖な仕事」などと極端に持ち上げることで、その実態を労務管理や社会政策において無いものとし、不当な分配がされた結果、生きづらさが生まれたり、社会にひずみが生じている…ということが書かれています。 「ひずみ」について書かれているだけあって、読み進めるのが辛い系の本ではありますが、とても勉強になりました。いくつか印象に残った&考えたことを、煩雑ではありますが共有したいと思います。引用部分は青の斜体で記します。 (仕事と育児の両立をめぐる問題について書きますので、そもそも共働き自体に関心がないとか、そういう選択自体に嫌悪感がある方、私はしんどい家事育児を一人で切り抜けてきたの
「グローバル化」はジャーゴンではなく、具体的な物質的根拠と客観的なシステムを持っています。 そのひとつが、「コンテナ」です。 以下、「コンテナ」にまつわる、今もなお色褪せない話をします。 「沖仲仕」という仕事があります*1。 この言葉自体は「差別用語」だということで、もっぱら「港湾労働者」といいますが。 要は、港で、輸送船の荷物の積み替えをする、「荷揚げ労働者」の人達のことです。 1950年代当初、沖仲仕に従事する力自慢の男たちは、ニューヨークで5万1千人以上、ロンドンでも5万人以上いたらしいです。 こういうイメージ 波止場 コレクターズ・エディション [DVD] マーロン・ブランドAmazon日活100周年邦画クラシック GREAT20 赤い波止場 HDリマスター版 [DVD] 石原裕次郎Amazon犯罪も絶えない。 ところが、1976年には、港湾労働者の数は7割減、その仕事の内容もすっ
読まず嫌いはよくないというのと、よいことも書いてあるという意見もあったので読んでみた。本当はアマゾンにも同文を投稿したかったのだけど(ちゃんと本名で)、あそこは星をつけなければいけないから、やめた。星をつけるのも、つけられるのも僕は好きではない。 全体的には、うーんなところが多いのだが、興味深い点もいくつかあったし深く同意できるところもあった。特に気がついたところを箇条書き。 ・3p 「インフルエンザワクチンは、どのように作っても効かないワクチンです」という冒頭からのコメントで、その後の理路もこれまで通り。 ・29pなど 過去のインフルエンザワクチンなどとの体験が著者の見解のバックボーンになっている。 ・41p 前橋レポート発表に至る内部事情が紹介されていて興味深い。 ・43pNEJMに載ったというだけでその論文を高く評価してはいけない、という意見はその通りだと思う。しかし、2007年の論
中国の経済発展の裏面は、深刻な社会問題となっている経済格差の拡大、経済的不平等である。その中国で経済学の父アダム・スミスの本が広範に読まれている。『国富論』ではなく、『道徳感情論』だ。温家宝の愛読書としても有名だ。 『中国共産党と資本主義』の本節で、コースは中国社会における道徳、正義のあり方を考察する。 市場経済は制度的空白状態では機能しない。価格制度が、その下で機能する広義の制度的背景と分けて吟味されるとき、国家、法律、社会規範、道徳律といったすべての非市場的制度は外にあると考えられ、市場の機能から切り離されてしまう。だがこれはとんでもない誤りだ。 経済学者は、たいていの経済現象は社会学者が「社会的事実」と呼ぶもの、つまり自然的・物理的事実とも心理学的データとも異なるものである、そのことを忘れるよう訓練されてきた。契約、通貨、所有権は社会的構成だ。社会現象が自然または心理現象とは異なる顕
■中国オタク「日本にはニャル子さん以外のクトゥルフネタの作品って何があるのかな?」■ ■ニャル子さんで中国に宇宙的恐怖が伝わった ありがたいことに「中国オタク的にクトゥルフはどうなんでしょうか?」という質問をいただいておりますので、今回はそれについてを。 以前にもちょっと書いた覚えがありますが「這いよれ! ニャル子さん」の中国オタク内でのちょっとしたヒットにより、ここしばらくの間で中国オタクの面々の間でもクトゥルフ神話がかなり意識されるようになっています。 それ以前も「デモンベイン」などで興味を持つ人もいたようですが、ニャル子さん以降はライト寄りな層まで広がっている感があります。そんな訳で今回は中国のソッチ系の掲示板で見かけた「日本のクトゥルフ要素のある作品に関するやり取り」を例によって私のイイカゲンな訳で紹介させていただきます。 ■中国人オタクの戦慄 ニャル子さんを見てから、日本のアニメ
その1の続き放射能関連で中心にまとめたその1に続き、その2ではそれ以外のテーマのものでセレクトしました。選考基準:おおむね2012年中に発行された書籍で食の安心・安全など食の分野をテーマとしてあつかっているものです。なお、内容紹介については全てamazonの各書籍のページの内容紹介から引用しています。飼い喰い――三匹の豚とわたし 内澤 旬子飼い喰い――三匹の豚とわたし作者: 内澤旬子出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2012/02/23メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 29回この商品を含むブログ (26件) を見る内容紹介自分で豚を飼って、つぶして、食べてみたい――。世界各地の屠畜現場を取材してきた著者が抱いた、どうしても「肉になる前」が知りたいという欲望。廃屋を借りて豚小屋建設、受精から立ち会った三匹を育て、食べる会を開くまで、「軒先豚飼い」を通じて現代の大規模養豚、畜産の
今年も、このエントリをあげる時期がやってまいりました。書店でもなかなかスペースをとってもらえない食に関する良い書籍を独断と偏見でご紹介します。選考基準:おおむね2012年中に発行された書籍で食の安心・安全など食の分野をテーマとしてあつかっているものです。なお、内容紹介については全てamazonの各書籍のページの内容紹介から引用しています。 お母さんのための「食の安全」教室 松永和紀お母さんのための「食の安全」教室作者: 松永和紀出版社/メーカー: 女子栄養大学出版部発売日: 2012/12メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 5回この商品を含むブログ (2件) を見る内容(「BOOK」データベースより)あふれる情報の“ウソ、ホント”をどう見極める?放射線も、食品添加物も、遺伝子組換えも、「なんとなくイヤ…」ではもうすまない。現代の「食」の基礎知識。おなじみサイエンスライター松永和紀
前にも書いたけど(参照)、原発事故後、百姓のことを人殺しみたいに言うひとたちが現れて、まあそこまででなくても、それを田んぼや畑で作った人がおることを知ってか知らずか、わしみたいな西日本の百姓から見てもちょっとまってつかよというような東日本の作物に対する仕打ちがあったわけやな。それはそういうことを言う人だけが悪いんじゃなくて、ざっくりと言うと行政やなんやらのリスクコミュニケーションの失敗もあったわけやけど。 ここ香川県でも、ぼんやりとSNSなどを眺めておりますとですね、自称八百屋さんが「◯◯県と〇〇県のりんごはダメだな」などと鳥のさえずりのように軽やかにダメ出ししたり、自称反原発活動家の(しかもリーダーっぽい)方がですね、福島第一原発から遠く離れた岩手県の震災瓦礫の受け入れを検討していると報じられた県の米を指して、これまた朝日のようにさわやかにダメ出し。そら腹立ちますわ。 これは香川県の話や
どんなコラム? 職業は科学ライターだけど、毎日お買い物をし、家族の食事を作る生活者、消費者でもあります。多角的な視点で食の課題に迫ります プロフィール 京都大学大学院農学研究科修士課程修了後、新聞記者勤務10年を経て2000年からフリーランスの科学ライターとして活動 先日、『お母さんのための「食の安全」教室』という本を女子栄養大学出版部から出した。私は、同出版部が出している月刊誌「栄養と料理」で2008年から連載しており、それを大幅に加筆修正してまとめたものだ。 タイトルは、編集者から提案を受け、私も納得して決めた。以前だったら、おそらく「うん」とは言わなかったと思う。「食の安全」を考えるのはなにも、お母さんだけではない。お父さんだって、おじいさんだって、みんなで考えなければ。なのに、わざわざ「お母さん」とうたうのは、ジェンダーバイアスにとらわれているからではありませんか? そう、編集者に
東日本大震災と地域産業復興 II: 2011.10.1~2012.8.31 立ち上がる「まち」の現場から 作者:関 満博発売日: 2012/10/15メディア: 単行本 東北震災以来、もう二年近く。ニュースだけ見ていると、国としての初動の遅れ、空疎な文明論を並べて増税の口実にされただけの復興会議、さらに最近判明した復興予算の流用など、特に国レベルの対応のまずさばかりが伝わってくる。また一部では原発事故への過度の不安から、瓦礫受け入れなど復興への協力すら拒否しようとする人々までいるのは悲しいことだ。 だがもちろん地元の企業や人々は着実に復興を進めている。本書は震災の直後、東北各地の特に製造業を中心とした産業復興の様子を、中小企業へのたんねんな取材調査で継続的に描き出す。それも「がんばりました」の一時的な美談集ではない。多種多様な企業の事業復活が、震災から一年半のそれぞれの時点で東北全体の産業
雑感616-2012.11.20「本ができました -『リスクと向き合う 福島原発事故以後』-」 この度、中公新社から拙著「リスクと向き合う-福島原発事故以後-」を出すことができました(聞き手は、読売新聞編集委員 河野博子さんです)。 この本は、二部構成になっておりまして、第Ⅱ部は、昨年末、読売新聞に連載された「時代の証言者」がベースになっています。 当初は、第Ⅰ部にリスク評価の概説みたいなものを書く企画でした。しかし、リスク研究をしてきた者として、原発事故問題に触れずに本を出すことは許されないと考えて、そのように変えようとしたのですが、これが、なかなか書けませんでした。今までやってきたリスク評価でいいのかというのが、ずっとつきまとい、苦しみました。 ブログ「雑感」で少しずつ書き、speechしつつ、一歩一歩考えを紡いできたのが、第一部「福島原発事故に直面して」です。まだまだ、入り口だ
空き家急増の真実―放置・倒壊・限界マンション化を防げ 作者: 米山秀隆出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社発売日: 2012/06/02メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 25人 クリック: 563回この商品を含むブログ (11件) を見る 真実といっても、別に特別な真実はなくて、原因も対策もごく常識的。いや一瞬、「空き家急増の裏には、実は太平天国教団の陰謀が!」とかいう本じゃないかという懸念が脳裏をよぎったが、そんなことはない。きわめて堅実でまっとうな本。最近、高齢化とともにまったく利用の予定や見込みがない空き家が増えていて、それを何とかしないと治安面でも環境面でもいろいろ問題が起きるよ、という話を統計的なデータも使って整理しつつ、一部の自治体や他国での対応も見ながら、日本で今後どういう施策を進めるべきかを簡潔に論じた本。空き家はもちろん一軒家だけでなく、マンションなんかも含まれ
松尾匡『新しい左翼入門』(講談社現代新書)をお送りいただきました。ありがとうございます。 「乞御高評」とのことですが、わたくしには「御高評」はできないので、斜め後ろからの偏見に満ちた批評になってしまうと思いますが、御容赦をいただければ、と。 http://www.bookclub.kodansha.co.jp/bc2_bc/search_view.jsp?b=2881675 さて本書は、ひと言で言えば、近代日本左翼運動史です。それも、始めから終わりまでを、その昔のNHK大河ドラマ『獅子の時代』の主人公、苅谷嘉顕と平沼銑次の二人のタイプにきれいに仕分けしながら説明していくというストーリー。 第一部 「二つの道」の相克史 戦前編 第一章 キリスト教社会主義対アナルコ・サンジカリズム――明治期 第二章 アナ・ボル抗争――大正期 第三章 日本共産党結成と福本・山川論争――大正から昭和へ 第四章 日
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