シンガポールは世界に冠たる富裕国。国民1人当たりのGDPは日本をはるかに上回る。最新の統計では資産10億ドル以上の富豪が21人、100万ドル以上なら20万人近くいるそうだ。では貧困層はどれくらいか? あいにく公式のデータはない。何しろ早くも01年に「既に貧困は過去のもの」と宣言しているお国だ。貧乏人がいないのなら、そのデータが存在しないのも当然かもしれない。 しかし現実には、庶民の暮らしは今も苦しいという報告がいくつもある。本当は、政府が貧困の定義を決めていないからデータの取りようがないだけではないか。 ちなみに、シンガポールに次ぐアジアの富裕地域である香港は先頃、貧困ラインの定義を決めている。だがシンガポール政府の担当閣僚は、貧困の定義に関して「単一の基準を設けるとひずみが生じる。例えば貧困ライン以上でも、諸般の事情で困窮している国民を救済できなくなる恐れがある」と否定的な姿勢を示してい