落ち着いたたたずまいを見せる金沢の街並み 風情漂う城下町・金沢、「おばあちゃんの原宿」巣鴨、四国を悠々と流れる四万十川。共通点は、2004年に制度化された新しい文化財「文化的景観」であること。だが時代とともに変わる景観を文化財として守るとは、どういうことなのか。学者らが文化庁の研究会で検討した結果が『都市の文化と景観』(同成社)として出版された。 農漁村も含む文化的景観のうち、特に産業構造の転換や開発にさらされやすい「採掘・製造、流通・往来及び居住」の分野を取り上げた。採石地から工場群、運河、温泉街、ニュータウンまでと幅広い。研究会はこれらの景観を人々の記憶や土地の歴史というキーワードから読み解き、次代へつなぐ価値を見いだそうとした。 文化行政と都市政策の一貫性など課題も多いが、古いものをただ守るだけが文化財保護ではないという考えは示唆に富む。研究会が調査した232地域のデータのほか