暴力団組員一行の東南アジア旅行は、新手のシノギ(経済活動)だった。現地の病院で支払った治療費の一部を負担する官民の制度を悪用して現金をだまし取ったなどとして、指定暴力団住吉会の副会長を含む同会関係者ら9人が10~11月、詐欺容疑などで警視庁に相次いで逮捕、起訴された。海外の案件の審査が甘くなる点につけ込み、制度を悪用した構図だが、暴力団排除条例の影響で従来通りのシノギが成り立たなくなりつつある中、資金繰りに窮する暴力団側の「懐事情」も浮かび上がった。(原川真太郎、太田明広)判読不能の「診断書」…病院の印鑑も偽造 「これは、全く判読不能ですね」 暴力団捜査を担当する警視庁組織犯罪対策4課の捜査員からタイ語や英語で書かれた「診断書」の翻訳を依頼された専門家は、一読するなりこう断言した。そこには食中毒を起こし、嘔吐(おうと)や吐血、腹痛などの症状で治療を受けたとする診断内容が示されているはずだっ