「やはり『物忘れ』はひどくなりました。長く話していると何を話したか忘れてしまい、正直、『認知症ってこんなに大変なのか』と思うことも多い。昔は患者さんにずいぶんな言葉をかけてしまったと、反省することもあります」 こう語るのは、精神科医の長谷川和夫さん。1974年に世界初の認知症診断の物差し「長谷川式簡易知能評価スケール」を発表した認知症医療の第一人者だ。今年、卒寿(90歳)を迎えた長谷川さんが、自らが認知症であることをカミングアウトしたのは2017年10月のこと。当時、「認知症の“権威”が認知症になった」というニュースは大きな反響を呼んだ。 あれから約2年――。長谷川さんの今を追った。 デイケアの入浴サービスが楽しみ 長谷川さんを訪ねると、にこやかに「日々楽しく過ごしています」と語った。認知症になってから、毎日、新しい“気づき”が多いという。 ©iStock.com 「認知症になって初めて体