作者: 櫻 愛美 ウェブサイト: 桃色の櫻 散る 文字数: 999 「発車致します。扉が閉まりますので、お足元にご注意下さい」 窮屈。朝の通勤通学ラッシュの電車に、彼女は乗っていた。立っている隙間もほとんどない状態だ。 セーラー服の彼女は、閉まる扉に挟まれるかもしれない……そこに立っている。 「ちょっと待ってくれ!」 全力疾走で駆けてくる足音が、大声と共に響き渡る。 若い男。今風の着こなしのチャラい男だ。 「ちょい、失礼すんで」 彼女は男に押され、余計窮屈になった。彼女の顔が思わず歪む。まあ仕方ないのだが。 男が乗った瞬間、扉が音を立てて閉まった。電車がゆっくりと加速する。 男は扉にすがり、手に握っていたイヤホンを耳元に近づけた。 この状況が分かるか。 彼女は精一杯の力を両足に込めた。少しでも足を崩せば……。 こういう状況だからこそ、電車は意地悪をする。曲がる線路で、電車が揺れた。彼女の背