エルノー・ルービック(ルービックキューブ発明者) 1980年の発売から40年余りで、累計3億5000万個を売り上げたルービックキューブ。その発明者エルノー・ルービックが、キューブが辿った数奇な運命と尽きせぬ魅力を綴った初の自伝『四角六面 キューブとわたし』から、読みどころをピックアップしました。 (3×3×3のキューブの)最終形の物体をテーブルから持ち上げ、慎重に回転させ始めた瞬間のことを覚えている。ここまでほぼ一人で取り組んできた。待ち続けた瞬間をようやく味わえた――わずかな時間だったが。なぜならそこで、新生児と同様、キューブが裸であることに気づいたからだ。飾り気がなければ、キューブの持つ重要な情報は理解されないままだ。全ピースの外から見える面は、全て同じに見えた。個々のピースの見分けがつかなければ、素晴らしい動きも目で追えず、キューブの膨大な可能性も見て取れない。配列の変化も見られない