www.project-syndicate.org 今回紹介するのは倫理学者ピーター・シンガーが先日にProject Syndicateに発表した記事。心理学者ポール・ブルームの新刊の書評的な記事である。 「共感の罠」 by ピーター・シンガー バラク・オバマがアメリカ大統領として選出されてから間もない頃、彼は若い女の子にこう言った。「今日の世界には共感が足りない。それを変えられるかどうかは、君たちの世代にかかっている」。オバマの発言は広く普及した考えを表現したものであることをふまえると、イェール大学の心理学者ポール・ブルームの新著『共感に反対する(Against Empathy)』の書名は衝撃的である。共感とは他人の立場に立ってその人が感じることを自分も感じることを可能にするものであるが、一体誰がそれに反対するというのだろうか? この疑問に答えを出すためには、もう一つの疑問も問わなければ