シゲルが昼食を済ませ自席に戻ってくると、机に二つ折りの手紙が置いてあった。タロウからだ。ここ二週間は毎日置いてある。シゲルから返信を出したことはない。エレベーターホールなどで顔をあわせたときに、読んだということだけ軽く伝える程度だ。とくに感想を求められることもない。タロウとしては、壁打ちテニスの壁が欲しいだけなのだろう。しかしこのままでよいのかどうか、シゲルは迷い始めていた。これまでのような肯定も否定もしない態度が、タロウの無内容な手紙を助長しているようにも感じる。事実、タロウの手紙は、初日の倍くらいに長くなっている。この日の手紙は、見るからに最長記録を更新している。よし、今日のこの手紙を区切りにしよう。今回こそちゃんと冷徹に評価し、それを漏れなくタロウに伝えよう。そう決意したタロウは、メモを用意し、手紙に目を落とした。 シゲさん おつかれさまです。今日は5月26日ですね。初夏、という以外