不慮の事故で死亡した人の賠償の際、慰謝料とともに支払われる「逸失利益」。生きていれば 将来得られたはずの収入という意味だが、重度障害者の場合、保険会社も法律家も「ゼロ」と査定 するのがほぼ常識になっている。北海道と青森県で相次いで訴訟を起こした遺族を訪ね、命の重 さの差別を考えた。(橋本誠) 自閉症17歳交通事故死 「保険会社の担当者から逸失利益はゼロ円と言われ、『うちの子は生きている価値がないんで すか』と言ってしまいました」。2年前、交通事故で重度障害者の長男=当時(17)=を失った母親 (47)札幌市=がつらい思い出を振り返る。 訴状によると、長男は2歳半で自閉症と診断された。事故があった2005年8月は養護学校の高等 部2年生。ヘルパーに付き添われ、路線バスで市内の丘陵公園に行った。バス停で降りる際、ヘ ルパーが運賃を払っている間に、バスの前方から道路に飛び出し、