明治天皇が天地神明に誓った五箇条は、新政権の理念を高らかにうたいあげ、現行の日本国憲法にも影響を及ぼした不朽の名文です。それが、どのように起草され、修正されていったかを追うとともに、五箇条を練った真の目的とすることが「起きなかった」事情を探ります。 天皇とはなにか 幕末には、一君万民という考え方がありました。日本のなかで、天皇だけが君主で、公家も武士も庶民も、一人の君主に従う万民であるべきだということです。これは身分差別を否定する考え方でもあり、擬似的に「自由平等」を表現することでもありました。 一神教じゃない人からすると、たとえば「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと云へり」といっても、「天」という目には見えない唯一絶対の存在がイメージしづらいです。誤解を怖れずにいうならば、一君万民という考え方は、天=唯一神の代替として天皇を利用したものだといえるでしょう。 王政復古クーデター以