「旅館で住み込みのバイト、してみない?」 東京都内の公園でホームレス生活をしていたアツシさん(30代、仮名)がそう声をかけられたのは3年前の初夏。このときはこれがきっかけで、よもや自分名義の銀行口座が振り込め詐欺に利用されるとは思ってもみなかった。 「炊き出し」に並んでいたら声をかけられた 声をかけてきたのは、中肉中背のごく普通の中年男性。アツシさんが並んでいた炊き出しの列にもよく顔を出しては、いろいろな人に話しかけている姿を見かけていたため、ホームレスに仕事を紹介する「手配師」のたぐいだろうと思っていたという。 このとき、所持金はゼロ。日増しに暑くなる中、着替えや洗濯に現金が必要になるかもしれない――。そんなアツシさんの心中を見透かすように、男は如才ない口ぶりで続けた。 「若い人がすぐ辞めちゃうから困ってるんだよ。僕らにも(バイトの頭数をそろえる)ノルマがあってね」 このとき、仮登録だけ