5年に1度、農林水産省が実施する国の基幹統計「農林業センサス」の一部で、60年以上の歴史がある「農業集落調査」の存廃がいま、議論になっている。次回2025年について、農水省が「実施が困難」だとして廃止の方針を示したところ、研究者らが猛反発。継続を求める署名は1000人を超えた。一方で、基幹統計は、相次ぐ不正で信頼性が低下。統計にかかわる職員の減少も進む。国の政策立案を支える重要統計は、大きな変革を迫られている。(特別報道部・山田祐一郎)
5年に1度、農林水産省が実施する国の基幹統計「農林業センサス」の一部で、60年以上の歴史がある「農業集落調査」の存廃がいま、議論になっている。次回2025年について、農水省が「実施が困難」だとして廃止の方針を示したところ、研究者らが猛反発。継続を求める署名は1000人を超えた。一方で、基幹統計は、相次ぐ不正で信頼性が低下。統計にかかわる職員の減少も進む。国の政策立案を支える重要統計は、大きな変革を迫られている。(特別報道部・山田祐一郎)
われわれが繰り返し聞かされてきた、南海トラフ地震の30年以内の発生確率が「70〜80%」という国の予測(80%予測)。それがどう計算されたのかはほとんど知られていない。その確率の根拠が江戸時代に港を管理していた役人の一族に伝わる古文書だと、知り私は驚いた。 南海トラフ地震 静岡県の駿河湾から九州沖の海底に延びる溝(トラフ)沿いで起きる巨大地震。過去1400年の歴史上、100〜200年間隔で大地震が起きている。政府の中央防災会議は2012年、最悪の場合、死者が約32万人に上ると想定。地震調査委員会は13年に南海トラフ全域でマグニチュード(M)8以上の巨大地震が30年以内に起きる確率は60〜70%と発表。18年には年数の経過により70〜80%と引き上げられた。
埼玉県所沢市の藤本正人市長(60)は30日、昨年8月に開かれた世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の関連団体のイベントに出席し、あいさつをしたと明らかにした。「旧統一教会系の団体と知っていた」といい、自身の選挙での応援は「一切ない」とした。市の定例会見で質問に答えた。 イベントは旧統一教会の関連団体が主催した「ピースロード2021」。所沢市境に近い多摩湖畔で開かれたサイクリングの出発式で「平和を願って頑張ってください」との趣旨であいさつしたという。参加者は40人ほどで、その場には地元選出ではない自民党県議もいたという。 「イベントには信者の知人から誘われ、その後、招待された」といい、旧統一教会に対する認識は「昔は問題があったが、その後は(霊感商法などの)情報が出なくなったので改善していると思っていた。反省はそんなにしていません」と述べた。今後の関わりについては「私の性格上、もう行かないとは言
7月に行われた安倍晋三元首相の葬儀に陸上自衛隊の儀仗(ぎじょう)隊が参列したのは、戦後の首相経験者の家族葬では初めてだった。防衛省が本紙の取材に明らかにした。防衛省・自衛隊の弔意表明の一環として、安倍氏の遺族の意向を確認し、防衛相の指示で行ったと説明している。当時の防衛相は安倍氏の実弟の岸信夫氏だった。 政府がかかわった首相経験者の公的な葬儀は、1967年の吉田茂氏の国葬以降、2020年の中曽根康弘氏の内閣・自民党合同葬まで11回ある。すべて儀仗隊が参列した。安倍氏の家族葬のように、政府が関与しない首相経験者の私的な葬儀は個別に行われてきたが、儀仗隊参列は「確認できる範囲において、安倍氏以外はない」(同省陸上幕僚監部)という。 一方、防衛省の前身の防衛庁長官経験者を対象にした家族葬への参列は3例あったという。同省は「元防衛庁長官等の家族葬で、遺族の意向を踏まえ儀仗を実施した」と説明し
政治に関心のある若者でつくる「選挙ギャルズ」が20日、安倍晋三元首相の国葬や改憲に反対するパレードを東京都内で行った。インスタグラムなどの交流サイト(SNS)で呼びかけ、約110人が参加。「国葬うちらは求めていない」などと訴えながら、日比谷公園から日本橋まで約2キロを行進した。 選挙ギャルズは5月末、地方選挙のボランティア活動を通じて知り合った大学生や会社員ら平均年齢21歳の10人が結成。この日は「ラブ&ピース・パレード」と称し、軽快な音楽に合わせて「うちらは求めてない国葬」「返せようちらの民主主義」と声を上げた。「国葬に反対」「憲法改悪マジ反対」など自作のプラカードを掲げて歩いた。 メンバーの1人は取材に「国民の意見に耳を傾けず、国会の議論も経ずに国葬を決定した。民主的でないやり方は信頼できない」と話した。パレードに参加した都内の女性会社員(24)は「コロナ禍で格差が拡大したのに、手を打
新型コロナウイルスの第7波が拡大する中、東京都内では感染で容体が悪化しても救急搬送が極めて困難な状況となっている。7月末には高齢のがん患者の搬送先が見つからず、感染判明から10時間後に自宅で亡くなった。都が公表する病床使用率は50%台と数字上は空きがあるものの、訪問診療の医師は「なぜ入院できないのか」と憤りの声を上げる。(小川慎一) 搬送先の病院が見つからず、感染判明から10時間後に自宅で死亡した男性に手を合わせる田代和馬院長(手前)と男性の妻=東京都品川区で(ひなた在宅クリニック山王提供) 7月28日午後9時前、品川区内のマンション一室で、救急隊員がスマートフォンで電話をかけていた。感染し容体が悪化した男性(83)の搬送先を探し、既に2時間を超えていた。駆けつけた区内の「ひなた在宅クリニック山王」の田代和馬院長が「100件ぐらいかけたか」と聞くと、隊員は「100件以上かもしれない」。
川崎市教育委員会が、12日に営まれた安倍晋三元首相の葬儀に合わせ、「哀悼の意を表するため」として、全市立学校175校に国旗の半旗掲揚を依頼していたことが分かった。半旗掲揚の要請は北海道帯広市教委でも判明。教育基本法は、特定の政党を支持するなど学校の政治的活動を禁じており、専門家は「政治的中立性に反する恐れがある」と懸念する。 川崎市教委などによると、市教委は11日、市立小学校114校、中学校52校、特別支援学校4校、市立高校5校のほか、図書館などの文化施設に対し「安倍晋三元内閣総理大臣の御逝去に伴う弔意の表明について(依頼)」と題した文書を出し、11日正午から12日までの半旗掲揚を求めた。実施の有無は確認しておらず、半旗を掲揚した学校数は不明としている。 市庁舎などを所管する総務企画局の通知に従ったという。依頼文には「対応が難しい場合は所属長の判断で、依頼内容を実施しないことを可」とも
電話相談を通じ、自殺を防ぐ「いのちの電話」。新型コロナウイルス禍の影響を受けたとみられる自殺者数が高止まりし、必要性が高まる中、研修費用は全額自己負担で採用後は無償という相談員の厳しい待遇がインターネットを中心に話題となっている。高齢化で相談員が減り続ける中、十分な相談員を確保するため専門家は「負担を軽減する必要がある」と指摘する。(市川千晴、我那覇圭) いのちの電話は全国50カ所で社会福祉法人やNPOなどが運営。相談員数はボランティア計5700人ほど。2021年の相談件数は前年より6000件増え53万件に上り、国内最大の窓口だ。 一般社団法人「日本いのちの電話連盟」によると、相談員になるには一般的に約1年間の研修を受け、電話の応答やボランティアとしての倫理などを学ぶ。費用負担は約4万円で、別に実費負担の合宿がある。交通費は出ない。首都圏のある運営団体では相談員になった後、3時間半の電
「中国人の良くないイメージを吹き払いたい」—。千葉県市川市の江戸川河口部で、食用にカキ採りをする中国人らが河川敷に大量のカキ殻を捨てて問題化していることから、東京都内などに住む中国人が、カキ殻の回収作業を始めた。近く任意団体をつくり、地元の市民団体などと一帯の環境美化につなげたいとしている。(保母哲) 江戸川河口部は洪水対策などのために掘削され、江戸川放水路とも呼ばれる。海水と淡水が入り混じり、そうした水域を好むカキなどが生息している。漁業権は設定されておらず、カキ採りは規制されていない。 地元住民によると、数年前から外国人がカキを採取する姿が見られるようになった。採取後にその場でカキを取り出し、殻を河川敷などに放置。水辺遊びをする子どもたちのけがや苦情が相次いでいる。カキを採る様子や放置された殻がテレビで報道され、対策を求める声も上がっている。
参院法務委に参考人として出席した(奥左から)龍谷大の石塚伸一教授、専修大の山田健太教授、法政大の今井猛嘉教授 インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策として侮辱罪を厳罰化する刑法改正案を巡り、参院法務委員会は7日、参考人質疑を行った。専修大の山田健太教授は、厳罰化が表現の自由の制約につながり、権力に対する「批判の自由」が損なわれるとして「問題は実際に捕まるかどうか以上に萎縮が生まれることだ」と指摘した。 山田氏は「刑事罰を重くすれば犯罪の抑止につながるが、そのために民主主義が壊れることはあってはならない」と主張。侮辱罪の適用対象の多くは、やじやデモなどの「大衆表現」だとして、「恣意(しい)的に刑事罰の対象として取り締まられることは、表現規制の典型例だ」と懸念を示した。
東京電力は23日、福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)の1号機原子炉格納容器底部を水中ロボットで撮影した画像を新たに公開した。核燃料があった圧力容器を支えている鉄筋コンクリートの土台(厚さ1.2メートル)の一部で、鉄筋がむき出しになっていることを確認。事故時に圧力容器から溶け落ちた核燃料(デブリ)の熱でコンクリートが溶けた可能性が高い。 圧力容器を支える基礎はコンクリートがなくなり、鉄筋が向きだしになっていた=東京電力福島第一原発1号機原子炉内で(国際廃炉研究開発機構、日立GEニュークリア・エナジー提供) 東電によると、格納容器底部から圧力容器真下につながる開口部付近では、塊状の堆積物を複数確認した。開口部に近いほど堆積物が厚く、土台の鉄筋がむき出しになっていた。コンクリートは1100度以上の熱で溶けるとされ、土台の破損が激しいと最悪の場合、支えきれなくなった圧力容器が落下する恐れもある。
2030年冬季五輪・パラリンピックの開催地に立候補し、本命視される札幌市で、招致反対運動が活発になっている。巨額の経費、新型コロナウイルスの感染拡大、国際オリンピック委員会(IOC)の専横…。開催リスクは、昨年の東京大会で経験したばかりだ。関係者は「市民の声を聞いて」と住民投票の実現を訴えている。(臼井康兆)
東京―名古屋間のリニア中央新幹線の工事で、東京都内で今年3月末までに300メートルにわたって行われる予定だった「調査掘進(くっしん)」が、約50メートルで止まっていることが分かった。調査掘進は、深さ40㍍以上の大深度地下をシールドマシン(掘削機)で掘り進めるもので、リニア新幹線として初のシールドトンネル工事。JR東海は「安全を最優先に、計画より時間をかけている」とし、具体的な理由を明らかにしていない。リニアのトンネルルート上の住民からは「きちんと説明して」と不安の声が上がっている。 調査掘進は、東京都調布市の東京外郭環状自動車道のトンネルルート上で2020年10月、陥没が発生したことを受け、リニア工事の地上への影響や、施工管理状況を調べるため実施。シールドマシンが発進する立て坑「北品川非常口」(品川区)から南西へ約300メートル掘る計画で、昨年10月に掘削を始めた。掘ったトンネルはリニア中
戦前、思想・言論弾圧に利用された治安維持法で逮捕された北海道旭川市の菱谷(ひしや)良一さん(100歳)が11日、支援者とともに国会を訪れ、同法を悪法と認め、弾圧の被害者に謝罪や賠償をするよう国会議員に要請した。10万人超とも言われる被害者は年々減り、菱谷さんは数少ない生存者の一人で、「最後の生き証人」とも呼ばれる。「平和で自由な社会のため、できる限り運動する」と誓った。(加藤益丈) 治安維持法 皇室や私有財産制度を否定する共産主義活動を取り締まるため、1925(大正14)年に制定された。28年に最高刑が死刑となり、41年には対象を政府に批判的な言論や活動全体に拡大した。終戦後の45年10月に廃止された。
没後千四百年の節目を迎えた聖徳太子。その実像を巡る議論がかまびすしい。<推古天皇の摂政として国造りを進めた><いや実際は平凡な皇子だった>−。駒沢大名誉教授の石井公成さん(71)は、仏教学を代表する学者の一人。両極端の説とは距離を置き、地道に文献を分析してきた。「太子像の探究を通じ、現代に生きるわれわれの在り方を問いたい」と語る。 太子は、奈良時代の日本書紀などの書物であがめられてきた。功績として示されているのは、役人の道徳規範を示した十七条憲法のほか、冠位十二階の制定、遣隋使の派遣…。大王(天皇)中心の政治制度を築き、仏教も深く理解して広めた人物とされる。「後世には観音菩薩(ぼさつ)の化身、浄土への導き手として、信仰の対象にもなってきました」。仏教の経典や事典が並ぶ駒沢大(東京都)の一室で、石井さんが力説する。 こうした聖人説を覆すのが、二十年ほど前から提唱されている「聖徳太子虚構説」だ
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