今月の稼働はゼロ なのに……。そうか、これは退職勧奨なのだろうと気づく。“真綿で首を締める”ように、私を囲む輪はじわりじわりと狭まっている。まわりの空気が一挙に重みを増す。 事務所に出所してから退所するまで、仕事がないのに時間をつぶすのは苦痛だった。そして、私は何よりも自分自身を恥じたのだ。忙しさが至上とされる職場で、目的意識を持った足取りの人々の群れの中で、私は何も生産せず、何にも貢献せず、ひたすら惨めでひたすら無様で……。 17時になって秘書さんたちが帰ると、いつも区立図書館に行った。そこで退館時間まで小説を読んで過ごす。物語に没頭するとき、私ははじめて自分の現状を脇に置いて、別の人生を生き直すことができた。 法律事務所では、どの仕事に何分費やしたかを記録することになっていた。その記録をもとに、顧客に請求書を発行するのだ。だから、ログを残すことは弁護士の生命線でもある。しかしながら、多