閑話休題。清掃をはじめて1時間が経過した。2人がかりで汗をかきながら探し回っても見つからなかった。 その後の予定もあるので諦めて部屋を後にしようと話していたその時、過去の原稿が大量に詰め込まれたゴミ袋の中から『生ポのポエムさん』の第1回原稿と新連載のためのネタ帳ノートが見つかった。 「運命的なものを感じましたね。僕は神や仏のたぐいは信じないんですけど、この時ばかりはナニかが原稿に導いてくれたのかなと思いました」 原稿の出来は正直、全盛期からは程遠かった。病気の影響か、ところどころ激しくデッサンが狂っていた。内容も50代の漫画家が貧困と病気に耐えかねて、練馬区役所の福祉事務所に行き生活保護の手続きをする…それだけの話である。 それでも、原稿はT氏にえもいわれぬ印象を残したという。 「実は原稿が上がる前に一旦ネーム(下書き)を見せてもらったんですが、ただの身辺雑記で面白くなかったんです。吠夢先