実用的な文字の書体も、その製作者はより実用目的にかなうもの、より見やすく美しい ものにするために、いろいろな観点から創意工夫を凝らし、新しい書体の製作や改良に努 めるものである。 その作業には多くの時間とエネルギー、そしてコストがかかる。したがって、文字を扱 う写植業界や電子機器業界、コンピュータ業界などでは、他人が製作した書体の文字を使 用する場合には、その製作者や所有者に使用許諾を得て、その対価を支払うのが一般的な 常識になっている。 したがって、たとえ著作物性が認められない書体であっても、創作性のある書体が他人 によりそのまま無断で使用されている場合には、信義則の法理を適用して保護されるべ きである。 専門家から見れば、本件のような場合に被告が意識的に細部において、何文字か若干手 を加えて変えていると推察できるような事実が窺える。ここで類似性という判断基準が問 題になってくる。 ●意