H3ロケットは現在、1年間の基本設計フェーズを終え、詳細設計フェーズが始まったところ。詳細設計では、各機器の具体的な設計を進め、今年度後半には、H3ロケットに搭載する新型エンジン「LE-9」の燃焼試験もいよいよ開始される。詳細設計には1年半ほどかかり、その後、次の製作・試験フェーズに移行する予定だ。 JAXAの岡田匡史・H3プロジェクトマネージャは、「基本設計はH3ロケットに与えられた使命を形にする最初のステップ。1年前はここに立てるかどうか不安もあったが、なんとかここまでやってこれた」と安堵しつつ、「ただ、まだ大きな試験はやっていない。開発の山場はこれからだと思っている」と気を引き締めた。 H3ロケットの全長は約63m、直径は約5.2m。日本のロケットとしては過去最大のサイズとなる。現行、日本の大型ロケットはH-IIA(202型/204型)とH-IIBに分かれているが、これをH3では一本
前回まではH3ロケットの機体に関して解説してきたが、最終回となる今回はロケットの製造工程の工夫や、発射場である種子島宇宙センターなどの地上施設について解説する。 ロケットを大量生産する「タクト方式」 三菱重工業飛島工場で製造されるH-IIBロケット。H3の製造拠点は未発表だが、おそらくここが継続して使われるだろう。Image Credit:JAXA H3ロケットの製造に関わる企業はたくさんあるが、全体をとりまとめ、組み立てを行うのは三菱重工業だ。部品を製造するメーカーへの発注も三菱重工業が行うため、生産管理に関しては三菱重工業の役割が大きい。 これまでのロケットは芸術品とも呼ばれ、ていねいで一品生産的な作業を要するものだった。しかし製造コストを下げるには、ていねいさはともかく作業を単純化、簡素化して大量生産に近いものに改めていかなければならない。第2回で解説したように、H3ロケットは機種ご
ブラックホールなどの謎に迫る「宇宙の天文台」として世界の天文学者から期待を集めながら人為的なミスで運用を断念した天体観測衛星「ひとみ」について、JAXA=宇宙航空研究開発機構は、4年後の打ち上げを目指して後継機を開発したいという意向を、文部科学省の審議会で明らかにしました。 一方で、試験観測では、これまで観測が難しかったブラックホール周辺の高温のガスの動きを世界で初めて捉えていたことが分かり、世界で最も高い観測能力を持つことも確認されていました。 こうしたなか、JAXAは世界の天文学者の期待に改めて応えたいとして、「ひとみ」の後継機を開発したいという意向を、14日に開かれた文部科学省の審議会で明らかにしました。 JAXAは、観測機器などの基本設計はそのままに、事故の再発を防ぐ対策を行ったうえで、4年後の2020年の打ち上げを目指したいとしています。 文部科学省では、世論の理解が得られるか見
衛星を破壊するほどの事故はなぜ起きたのか。まずこの前編では話の前提として、事故の事実関係を淡々と積み上げ、ひとみに何が起きたのかを詳しく見ていくことにしよう。その後、中編・後編と続け、さらに深く掘り下げることにしたい。 異常1:ゆっくりと回転を開始 ひとみの事故が発生したのは2016年3月26日。事故のきっかけになったのは、衛星の姿勢決定に使われるスタートラッカ(STT)という装置の異常動作だった。 スタートラッカは、光学カメラで宇宙空間を撮影し、視野内に見える恒星の配置から、衛星の姿勢を推定する。私たちも星空を眺めて、北斗七星が見えたら方角が分かるだろう。原理はこれと同じで、搭載した恒星カタログとのパターンマッチングを行うことにより、高精度に姿勢を推定することが可能だ(ひとみの場合、精度は8.8秒角)。 スタートラッカは高精度という長所がある反面、地球を向いて星が見えない(地触)ときは使
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は6月14日、X線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)の事故に関する調査報告書をまとめ、文部科学省の宇宙開発利用部会に提出した。この報告書は、同部会が設置した第三者委員会が審議し、「内容が妥当」と判断されたもの。この中で、JAXAは事故の再発防止を目的とした4項目の対策を明らかにしている。 今回も従来と同様、JAXA宇宙科学研究所(宇宙研=ISAS)の常田佐久所長と久保田孝宇宙科学プログラムディレクタが質疑に応じていたのだが、冒頭、高橋忠幸ASTRO-Hプロジェクトマネージャ(プロマネ)が一言述べる機会があった。ひとみの事故後、高橋プロマネはJAXAの記者会見等には出席しておらず、公の場で発言するのは初めて。以下、全文を掲載する。 「本年2月に打ち上げたASTRO-Hからの通信が途絶えて以降、なんとか復旧させようと衛星の現状把握と回復に向けた努力を続けてきた
宇宙空間にできた「ゆがみ」が波となって伝わる現象、いわゆる「重力波」の2回目の観測に成功したと、アメリカを中心とした国際研究チームが発表し、今後のさらなる観測に期待が高まっています。 「重力波」は、ブラックホールなどの天体によって生み出された宇宙空間の「ゆがみ」が波となって伝わる現象で、アインシュタインが100年前に存在を予測し、LIGOが、初めて観測に成功したと、ことし2月に発表しました。 研究チームは今回、2つのブラックホールが合体するときに出た14億年前の重力波を新たに観測したということです。初めて重力波が観測されたのは去年9月で、2回目にあたる今回の観測はその3か月後でした。相次いで、重力波が観測されたことで、これまでの観測手段では見つからなかったブラックホールの分布や、今後の重力波の観測の頻度などを予想するのに役立つとしています。 研究チームによりますと、さらにまた、重力波が観測
◆2018/04/12 静大衛星STARS-C報告会を開催しました。大勢のご参加、有難うございました。 ◆2018/03/03 はごろも(STARS-C)は大気圏再突入いたしました。 ◇2018/03/01 静岡大学地上局において、2018/03/01午前にCWビーコンを一部受信できました。 ◇2018/01/28 静岡大学地上局では2017/12/11以降CWビーコンが受信できていません。 しかし、2018/01/25-28においてFH Aachen(ドイツ)地上局で四日間連続で受信できています。 ◆2017/10/17 HP掲載 これまでの運用データを解析した結果、はごろもは9月11日にテザー伸展コマンドを受信したと推定しています。 しかしながら、テザー伸展が行われたことを確認できていないため、 その確認、およびテザー伸展コマンドの再送信を行っていきます。 ◆2017/10/01 HP
静岡大学工学部(浜松市)は8日、国際宇宙ステーション(ISS)から放出予定の超小型衛星「STARS―C」を公開した。将来、宇宙ステーションと地上をケーブルで結ぶ「宇宙エレベーター」などの実現に向け、「テザー」と呼ばれる「ひも」を伸ばす実験をする装置だ。企業や団体の協力を得て、静大の教授や学生が開発・製作した。 STARS―Cは、いずれも1辺10センチの正六面体の親機と子機、それに両機をつなぐ長さ100メートルのテザーからなる。重さは計2・66キロと軽量だ。テザーは太さ0・4ミリと細いが、ケブラーという強力な合成繊維でできている。 宇宙貨物船などでISSに運び、日本の実験棟「きぼう」から放出。親機と子機を分離した後、テザーを伸ばして詳細なデータを記録する。宇宙エレベーターや、「導電性テザー」による宇宙ごみの回収につながる実験だ。 宇宙航空研究開発機構(JAX… この記事は有料会員記事です。有
防衛省は30日、同省が初めての運用を目指す通信衛星について、7月13日の打ち上げを延期する可能性があると発表した。打ち上げ予定地の南米フランス領ギアナへの輸送中に損傷した恐れがあるため。半年以上の遅れもあるとしている。 衛星は、Xバンド通信衛星「きらめき1号」。日本から民間輸送機で現地に運んだが、衛星を積んだコンテナの両側面に深さ40~50センチのへこみが見つかった。貨物室とコンテナ内の気圧差が原因とみられる。 防衛省は、現在利用している民間衛星3機に代わり、独自に衛星3機を整備する計画で、来年1月に2号機、2020年度末までに3号機を打ち上げる。
制作はCBS Studios、ブライアン・フラーとアレックス・カーツマンがエグゼキュティブプロデューサー、ニコラス・メイヤーが脚本に名を連ねている。 米国ではプレミアエピソードがCBSネットワークで放送予定。CBS All Accessで先行放映される(米国、カナダ、オーストラリアのみ視聴可能)。世界各国のテレビ局やプラットフォームでも視聴可能になるという。 番組制作はカナダのトロントで今秋から始まる。 関連記事 ミスター・スポック役のレナード・ニモイ氏が死去 SFドラマ「スター・トレック」シリーズで沈着冷静なエンタープライズ号技術主任、ミスター・スポックを演じた俳優のレナード・ニモイ氏が肺疾患で亡くなった。83歳だった。 “スター・トレック 3”の封切りは2016年7月8日に決定──The Variety報道 「スター・トレック」、「スター・トレック イントゥ・ダークネス」に続くStar
宇宙の歴史をあなたは知っているか怪しげな宗教か、自己啓発セミナーの宣伝文句か、と勘違いする方もいるでしょうが、真面目な話です。 宇宙の歴史はおおよそ138億年。 気が遠くなるような年月ですが、その歴史のなかで、もっとも活発に銀河が星を生んだのが100億年ほど前でした。 銀河が何度も衝突をくりかえし、中心の超巨大ブラックホールがガンガン成長していったのも100億年ほど前。 今の宇宙ではかつてほど星が生まれていない。衰退期に差し掛かっています。 「だから、世界は混とんとしている」 と言った話はさておくとして。 この宇宙の歴史、特に星がどのように形成されていくのか(これを星形成史と言います)。 実はまだきちんと観測にもとづいて理解されたわけではありません。 そこで、世界6か国の研究者がプロジェクトチームを作り、観測を進めようとしています。 このプロジェクトチームに日本の研究者19人も参加。 BI
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は5月10日、運用を断念したX線天文衛星「ひとみ」(ASTRO-H)について、文部科学省・宇宙開発利用部会にて報告した。基本的に4月28日の記者会見で発表した内容に沿っており、ほとんど新しい情報は出てこなかったが、今回初めて、FTA(故障の木解析)の検討内容が公表された。 【レポート】運用断念のX線天文衛星「ひとみ」、事故の背景には何があったのか FTAというのは、発生した事象をトップに置いて、考えられる要因を全てリストアップした上で、可能性の大小を評価する解析手法である。「故障の木」(Fault Tree)という名称のように、1次要因、2次要因と枝分かれする様子は木に似ている。今回は、衛星破損と姿勢異常について、それぞれFTAを実施している。 JAXAは前回の記者会見で説明したように、ひとみの事故は以下の3段階のステップで発生したとみている。 スタートラッ
4月28日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、3月26日にトラブルを起こして通信が途絶したX線天文観測衛星「ひとみ」の復旧を断念したと発表した。トラブル発生後に続けてきた調査で、衛星本体が異常な高速回転を起こし、その遠心力で2組装備していた太陽電池パドルが両方とも脱落してしまったことが確実となったためだ。これまで太陽電池パドルが片方でも残っていれば、復旧の可能性があるとして通信を回復する努力を続けてきたが、希望は絶たれた。 復旧断念により、今後の焦点は事故調査に移る。どのようなプロセスで最初のトラブルが発生し、発展し、事故に至ったかは、すでにほぼ判明した。だが、原因究明は事故調査の第一歩でしかない。事故を招き寄せた開発と運用の体制、またそのような開発・運用体制を採用した組織の体質、さらに遡ってそのような組織体質が成立する背景にある行政や政策にまで遡ってこそ、次につながる事故調査と言える。
重力波とは? アインシュタインの一般相対性理論によれば、質量をもった物体が存在すると、それだけで時空にゆがみができます。さらにその物体が(軸対称ではない)運動をすると、 この時空のゆがみが光速で伝わっていきます。これが重力波です。重力波はすべてを貫通し、減衰しないと考えられています。東京大学宇宙線研究所の重力波研究グループでは、「重力波」の直接検出を行い、それを将来の「重力波による天体観測」の創生につなげていきたいと考えています。 重力波を捕らえる意義 人類は、太古よりつい最近まで可視光でしか自然を観察できませんでした。しかし19世紀に入って電波やX線が発見されると、遠くに一瞬で情報を伝えたり、人体や物質の中の様子が観察できるようになりました。そのため今まで全く未知だった世界への扉が開かれ、人類の知識の増大・世界観の変化に大きく役立ちました。 その後も赤外線・紫外線やガンマ線など、次々と新
依然として状態が確認できない状況が続いているX線天文衛星「ひとみ」について、JAXAは15日に記者発表を行い、衛星の姿勢異常の発生から物体の分離に至るまでの有力な推定メカニズムを公表した。 【2016年4月18日 JAXA】 3月28日を最後に「ひとみ」との通信は途絶したままだが、それまでに得られたテレメトリデータを基にした解析から、衛星が姿勢異常を起こした原因とその後の事象について有力なメカニズムが推定された。 「ひとみ」は3月26日、活動銀河核を観測するために予定どおりの姿勢変更を行った。その際、2種類の機器を用いて姿勢を判断し制御を行うのだが、一方のスタートラッカ(STT)と呼ばれる機器が何らかの理由により想定外の動作を行ったと推定される。その結果、もう一方の慣性基準装置(IRU)と呼ばれる機器の誤差推定値が大きな値のまま保持されてしまう(本来はSTTのデータと照合し誤差を小さくする
目の色を変えて日本の電化製品を買いあさる中国人の「爆買い」を見て、中国の科学技術力は「まだまだ発展途上」と考える日本人が多いかもしれない。しかし、科学技術分野の研究開発に投じる国家予算の規模、最近の学術論文数、世界の大学ランキングなどを子細に分析すると、まったく違った中国像が浮かんでくる。科学技術分野で世界一をめざす「科教興国」の実像だ。日本も無関心を決め込んでは将来が危うい。一衣帯水の大国が科学技術にかける本気度と最新の成果について、中国の科学技術政策に詳しい馬場氏がリポートする。 「中国の科学技術は日本を抜いた」と訴えているのは、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)特別顧問の沖村憲樹氏である。沖村氏は先ごろ、日中の科学技術交流推進に貢献した功績で、中国政府から「科学技術協力賞」を授与された。この賞は中国で最高の科学技術の国際叙勲であり、行政官として初めてという異例の表彰で、外国人
宇宙は138億年前のビッグバンで誕生したという説には、宇宙には始まりも終わりもないとする説が長らく対抗した。だが後者では説明のつかないことがある。それは人類が他の知的生命の存在を示すものに出合っていない事実である▲もし宇宙が無限の昔からあったのなら、宇宙探査をする知的生命も数限りなく生まれているはずだ。ならば太陽系にも人工物や電波が飛び交っていなければおかしい。人類の孤独こそが宇宙に始まりがあった証拠だという▲もちろん138億年の時間も多くの知的生命を生んでいるはずだが、互いに接触するには途方もない距離で隔てられている。太陽系にもっとも近い恒星、ケンタウルス座アルファ星でもその間の距離は4・3光年、今の人類の技術では到達には3万年もかかるという▲その恒星系に光速の5分の1という超高速で飛ぶ小型探査機の船団を約20年で到達させるという驚きの計画が発表された。宇宙物理学者のホーキング博士がフェ
唯一の宇宙空間への進出方法であるロケットは、大量の液体燃料を必要とするため、毎回、巨額の打ち上げコストが必要です。この高額すぎる打ち上げコストが宇宙開発の発展を妨げる要因の1つとなっている中、ロケットより低コストで宇宙空間に進出できるアイデアとして構想されているのが「軌道エレベーター(宇宙エレベーター)」です。現状の技術レベルでも実現でき得る可能性を秘めている軌道エレベーターの仕組みを、イラスト付きで解説したムービーにより、どんな技術的課題が残っているのかということまで理解できます。 Space Elevator – Science Fiction or the Future of Mankind? - YouTube 宇宙へ気軽に旅行できるSFの世界を夢見る人はたくさんいると思いますが…… 現在の宇宙開発レベルはSFの世界を実現しておらず、宇宙へ行けるのは宇宙飛行士かお金持ちだけ、という
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