どんな物語がふさわしいのか。過去18回の受賞作を調べて傾向をつかみ、1週間で書き上げた。検索サイトの構造や癖を分析し、特定のホームページをサイト上位に表示させる技術SEO(検索エンジン最適化)の第一人者らしい。 「最適化の考え方を小説に持ち込むのは不謹慎でしょうか」と言いながらも、受賞作「他人の垢(あか)」は、庶民の哀歓を描き、読後感は温かい。 「洗濯屋 他人の垢で 飯を食い」。自虐の川柳を口にし、鬱々(うつうつ)と過ごすクリーニング店の二代目。父は手仕事を守り続けるが、需要の落ち込みと格安店に客を奪われ、先が見えない。そんなある日、客の一言に希望を見いだす。「ええ仕事や。腕のいい店には、いずれ客が戻る」 「人を取り巻く環境は、とらえ方次第で明るくも暗くもなることを伝えたかった」と言う。千葉市の高校を出て職を転々とした。転機は事故で大けがをした27歳の時。不安の中で思い立ったのがネットだっ