確かにそのことを考えたこともなかった。 生物学者の間ですら事情はほとんど同じだったという。 魚はヒトと形態も棲息方法も全く異なり、表情も変化せず、声も出さないように思える。 だから「魚は痛みを感じるか」と問われた時、意表を突かれた思いがするのだ。 イギリスの魚類学者が書いた本書によれば、 痛みを与える事象に神経系が反射する無意識的な段階と、 脳が痛みに気づき、苦しむ意識的な段階の2つがあって初めて「痛みを感じる」と言えるのだという。 結論を言えば、マスを使った観察、実験、検証によって 〈魚には痛みや苦しみを感じる能力が備わっていることを示す数多くの証拠〉 が見つかり、 〈その能力は、ヒトの新生児や早産児以上〉 であることが判明したというのだ。 この事実は驚くべき事であると同時に、厄介な問題を孕んでいる。 〈ある動物に痛みのために苦しむ能力があると認めれば、 その動物