1.概要 独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦、以下「JAMSTEC」という。)海底資源研究開発センターの西尾嘉朗技術主任は、琉球大学理学部の土岐知弘助教らと共同で、紀伊半島の東南に位置する熊野海盆の海底泥火山(地下深部で形成された、水分を多く含む泥質堆積物が表層に噴き上がってできた円錐形の高まり:図1)から掘削された堆積物のサンプルに、最大310°Cと推定される高温を経験した成分が含まれることを明らかにしました。 これまで、熊野海盆の海底泥火山に含まれる水は60°C~150°C付近(推定海底下5km)の粘土鉱物の脱水に由来すると考えられてきましたが、今回、水の温度履歴指標となる水に含まれるリチウム(以下「Li」という)元素の同位体比(7Li/6Li比)を詳細に測定したところ、粘土鉱物の脱水作用以外にも、南海トラフ巨大地震の震源域に相当する210°C~310°C付近(推定海底下1