ギガワット規模の蓄電池を併設 米国の南西部に位置するアリゾナ州というと、グランド・キャニオンの切り立った渓谷や広大な砂漠の風景が思い浮かぶ。そんな雄大な自然を擁するアリゾナ州で、2024年3月、同州で最大規模のエネルギー貯蔵設備が稼働した。 このエネルギー貯蔵設備は、出力260MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)に併設されており、1GWhもの電力量を充電することができる(図1)。
ギガワット規模の蓄電池を併設 米国の南西部に位置するアリゾナ州というと、グランド・キャニオンの切り立った渓谷や広大な砂漠の風景が思い浮かぶ。そんな雄大な自然を擁するアリゾナ州で、2024年3月、同州で最大規模のエネルギー貯蔵設備が稼働した。 このエネルギー貯蔵設備は、出力260MWのメガソーラー(大規模太陽光発電所)に併設されており、1GWhもの電力量を充電することができる(図1)。
送信元のメールアドレスに正規サービスのドメインを使用する「なりすまし」のフィッシングメールを見抜く「送信ドメイン認証」。実際にどのくらいの効果が見込めるのだろうか。 フィッシング対策協議会が2023年6月に公表した「フィッシングレポート 2023」によれば、同協議会が2022年に受信したフィッシングメールのうち、71.6%が正規サービスのドメインを使用したなりすましのメールだった。つまり、7割超のフィッシングメールを送信ドメイン認証で検知できる可能性がある。 さらに、認証に失敗したメールの処理を送信側が指定できるDMARC(Domain-based Message Authentication、Reporting、and Conformance)を適切に運用すれば、7割超のフィッシングメールの受信を拒否できる。 ただし、あくまでも「適切に運用すれば」である。送信側の企業や組織がDMARCを
清水建設などのJVが、千葉県発注の護岸工事で設置した仮締め切り堤防の大型土のうを勝手に一部撤去し、その箇所から豪雨時に越水していたことが分かった。県の調査で他にも4カ所で、土のうを撤去したために必要な堤防高を満たしていないと判明した。県が2023年9月29日に明らかにした。 6個の大型土のうが撤去されていた明光橋下流の仮締め切り堤防。近くの護岸でひび割れを補修する際、必要な土の調達を怠り、土のうを解体して中の土を使用していた。越水発生2日後の2023年9月10日に撮影(写真:千葉県) 千葉県茂原市などで23年9月8日、台風13号に伴う記録的な大雨で広範囲にわたって浸水被害が発生した。県は、10月末をめどに有識者会議を立ち上げ、当該箇所からの越水と浸水被害との関係などを調べる。 問題があったのは、千葉県が茂原市と長生村で進めている2級河川一宮川の護岸工事だ。2工区に分かれ、いずれも清水建設と
2023年7月14日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発中の全段固体燃料ロケット「イプシロンS」の第2段モーターが地上燃焼試験中に爆発した。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)製モーターケースの一部が想定以上の高温になって強度が低下し、燃焼時の内部圧力に耐えきれなくなって爆発した可能性が高い。その原因について、JAXAは「推進剤燃焼異常」と「インシュレーション断熱不良」の2つに絞り込んだ。 「イプシロンS」はJAXAが開発を進めている3段式の全段固体燃料ロケットで、2024年度の初号機打ち上げを目指している(図1)。「H3」と共に日本の次期主力ロケットとして位置付けられている機種だ。JAXAは2013年度に初号機を打ち上げた全段固体燃料ロケット「イプシロン」の改良を段階的に進めており、イプシロンSはその最新機種となる。地球を南北に周回する太陽同期軌道に600kg以上を打ち上げる能力を持
ファイアウオールの開発者として著名なNir Zuk(二ア・ズーク)氏は、今は攻撃者の侵入を前提としたセキュリティー対策の強化に注力しているという。こうした変化の背景、現在のSOC(セキュリティー・オペレーション・センター)の課題、AI(人工知能)を活用した今後のセキュリティー対策などについて同氏に聞いた。 ズーク氏は1990年代にセッション情報を管理するステートフルインスペクション方式のファイアウオールを発案したことで知られる。同氏はその後、次世代ファイアウオール(NGFW)を標榜するセキュリティー・ベンダー、米Palo Alto Networks(パロアルトネットワークス)を創業して長年CTO(最高技術責任者)を務めてきた。つまり企業ネットワークの境界において、サイバー攻撃を水際で防ぐ製品についてはプロ中のプロなのだが、近年は既に攻撃者が社内に侵入していることを前提とした防御策を重視して
再開発の対象となっていたビルは、地下3階・地上9階建てで1954年に竣工した建物だ。名古屋三越(名古屋市)によると、ビルの老朽化対策として2010年から12年にかけて耐震補強工事を実施。16年、22年に改装工事を行っている。 商業施設を運営するオリエンタルビルは、建物の老朽化などを背景に、19年9月に当該ビルを建て替える再開発事業の構想を発表。現在のビルを地下4階・地上34階建て、高さ180mの超高層ビルへ建て替える計画を打ち出した。低層部に三越をはじめとした商業施設を、中層階には国際会議に対応するコンベンションホール、高層階にホテルを誘致する複合施設とするもので、29年をめどに完成を予定していた。 オリエンタルビルによると、構想の発表以降、同社は三越伊勢丹ホールディングスなど他の地権者と共に再開発準備組合の設立に向けて協議を重ねてきた。オリエンタルビルの平松潤一郎代表取締役は、「関係者に
建設技術研究所が手掛けた橋の耐震補強設計3件で、次々とミスが判明した。3件とも、同社の社員が表計算ソフト「エクセル」で作成した同じファイルを使用し、同様のミスを犯していた。作成者自身で使うことを前提に作ったファイルだったため、他の社員が利用した際に使い方を誤った。 最初にミスが見つかったのは、東日本高速道路会社東北支社が発注した秋田自動車道の大戸川橋の耐震補強設計だ。契約金額は約9500万円で、履行期間は2018年2月~19年9月。橋脚への鉄筋コンクリート巻き立てや炭素繊維による補強、落橋防止構造の設置、縁端拡幅などの設計を実施した。 同橋の耐震補強工事は西松建設が22億4400万円で受注し、20年5月~23年9月の工期で進めている。施工途中の22年12月、縁端拡幅に当たって既設橋脚の鉄筋位置を探査した結果、アンカー削孔位置の変更が必要だと判明。同社が建設技術研究所へ削孔位置について問い合
「この投稿、どう思います」。2023年7月3日の夜、知り合いの富士通退職者から電子メールが届いた。Facebookに富士通退職者が集まるグループがあり、そこに現役の上級幹部名で投稿があったが、物議をかもしているという。 自治体が証明書をコンビニエンスストアで発行できるサービス「Fujitsu MICJET コンビニ交付」のトラブルについて、あるOBが6月末、「危機管理が全くできていないと懸念」している、と投稿した。これに対し、「福田譲」名義で次の投稿がなされた。 「現役です。問題になっているプログラムは2009年製です。現役製ではありません。自分ごととして『応援』していただけるOB/OGを求めている/リスペクトしていること、分かっていますか? ガッカリする/ありがたく思う。大きく分かれています。皆さん、どうありたいですか?問われているのは皆さんではないかと思います」 富士通で福田譲氏と言え
最近になってにわかに注目を集め始めた核融合発電技術だが、実用化は早くても2030年代半ば。やや保守的な評価では2050年かそれ以降という見方も多い。ところが、2024年にも発電を始めるというベンチャーが出てきた。 それはこれまでよく知られている大きく2つの方式、具体的には日本を含む数多くの国家が開発に参加し、フランスに建設中のITERのようなトカマク方式と、2022年11月に米国でレーザー光のエネルギーを超える核融合エネルギーが得られたレーザー核融合方式のどちらでもない、第3の方式「FRC(磁場反転配位)型プラズマ」に基づく注1)。核融合反応で中性子を出さず安全性が高く、簡素な設備で、しかも蒸気タービンを使わずに発電できる革新的な方式である。
天ケ瀬ダム(京都府宇治市)に増設したトンネル式放流設備から初めて本格放流したところ、吐口部の対岸で崩落や洗堀が発生した。放流が原因となった可能性がある。ダムを管理する国土交通省淀川ダム統合管理事務所では、「専門家の意見を聞きながら、原因究明と対策の検討を進める」(森下英明副所長)としている。
国連が2022年7月に発表した「世界人口推計(World Population Prospects:WPP)2022」によれば、2050年の世界人口は約97億人(中間値)と、2021年よりも約18億人増加する見通しだ。国連食糧農業機関(FAO)の推定によると、この増加と富裕化を続ける人口を養うために、2050年までに農業生産量を現在より60%も増やす必要があるという。かなり大きな数字である。 一方で、FAOによると、世界の食用作物の最大40%が、植物病害虫の被害によって失われており、これによる農産物貿易の損失は、年間2200億ドル以上にのぼるという。農業生産量を大幅に増やすためにも病害虫被害の低減は喫緊の課題になっている。 これまで病害虫の駆除には、主に化学合成農薬が用いられてきたが、近年は病害虫が「薬剤抵抗性」を持つようになり、農薬が効かなくなってきたことが指摘されている。薬剤抵抗性とは
太平洋セメントは、フレッシュコンクリートに二酸化炭素(CO2)を効率よく固定するシステム「カーボキャッチ」を開発した。セメントと水を混ぜてスラリー状にしたセメントスラリーにCO2を供給し、炭酸カルシウムとして固定する。 カーボキャッチでは、CO2を満たした密閉容器内に、セメントスラリーを投入して循環させる。密閉容器は、セメントとの反応で消費したCO2と同量のCO2を随時供給する仕組みを持つ。水セメント比300%のセメントスラリーに、セメント1t当たり360kgのCO2を供給すると、そのうち93%を固定できる。セメントスラリーにCO2を直接吹き込む従来の技術「エアレーション」では固定率が20%ほどだった。
コンピューターシステムに甚大な被害を与えるマルウエア(悪意のあるプログラム)の中でも、トップクラスに凶悪なのが「ランサムウエア」だ。「ランサム(身代金)」とソフトウエアを組み合わせた造語で、ユーザーのデータを人質に取り、身代金を取ろうとしてくるのがやっかいこの上ない。 犯人に身代金を支払っても、暗号化を解除してくれるとは限らず、基本的には泣き寝入りするしかない。既知のランサムウエアであれば、暗号化を解除するツールもあるのだが、サイバー犯罪者の技術も日進月歩。新型のランサムウエアが暗号化したデータはどうしようもないことが多い。 そのため、重要なデータは普段から守り、ランサムウエアに感染しない防御対策を準備しておくことが重要だ。そして、万一ランサムウエアに感染しても、データを失わないようなバックアップ体制を構築する必要もある。今回は、データを失わないためのランサムウエア対策を紹介しよう。 たく
「今は世界的に空飛ぶクルマ(eVTOL〔電動垂直離着陸〕機)に注目が集まっているが、“こっち”の方がモビリティーとして効率が高く、手軽により遠くへ行ける。投資家が出てくればやりたいんだけどなあ……」 元ヤマハ発動機の無人ヘリコプター開発のエンジニアで、現エーエムクリエーション(東京・葛飾)社長の松田篤志氏は、無念そうにこう話す。同氏が言う“こっち”とは、空飛ぶクルマの船版とでもいうべき「表面効果翼船」である。出発・到着時は船として航行し、巡航時は「飛行機」に変身する乗り物だ。 ただ、飛行機といってもeVTOL機のように高度150m以上を飛ぶわけではない。波の高さにもよるが、海面のわずか1~5mの高さを、eVTOL機と同等の100~350km/hという速度で航行する。 この「空飛ぶ船」は海面すれすれを飛ぶため、飛行効率が高い。「表面効果」(下が地面の場合は「地面効果」ともいう)という現象を使
今はプログラミングができないけれども、ゆくゆくはできるようになりたい。そう思っている人は多いだろう。そうした人が知りたいのは「独学でプログラミングができるようになるのか」ということではないだろうか。 こうしたことを考えているのは、「独学コンピューターサイエンティスト Pythonで学ぶアルゴリズムとデータ構造」(日経BP発行)という書籍を読み始めたからだ。著者のコーリー・アルソフ氏は、大学の政治学科を卒業し、独学でプログラミングを学んで職業プログラマーになったという。前著の「独学プログラマー Python言語の基本から仕事のやり方まで」(日経BP発行)は、そうした経験を通して同氏が得たプログラミングの知識をまとめたもの。そうした知識の中から、特にアルゴリズムやデータ構造といったコンピューターサイエンスに焦点を当てて解説したのが本書だ。 もっとも同氏がいう「独学」は、大学でコンピューターサイ
太陽光パネル1枚と約11km先のパネル約8万枚を電線でつないで一体の発電所とする太陽光発電計画について、西村明宏環境相が「待った」をかけた。計画が合理性に欠けると判断し、電線敷設の撤回を含む抜本的な見直しを求めた。西村環境相が2022年8月18日、環境影響評価(アセスメント)手続きに基づき、西村康稔経済産業相に意見書を提出した。 経産省は、国の固定価格買い取り制度(FIT)で認定された場所に数枚のパネルを置き、そこから数十キロメートル離れた「飛び地」に大半のパネルを設置する太陽光発電事業をかねて問題視。制度の趣旨を逸脱する行為とみて、基本的に認めない方針を示してきた。今回の事業計画についても、西村環境相の意見を踏まえ、計画の見直しを求める可能性がある。 経済産業省が問題視する「飛び地の追加」のイメージ。2020年7月22日の有識者会議の会合で示した。会合では、地域の理解と信頼を得るための事
さまざまな産業で電化が進み、パワーエレクトロニクスへの期待が高まっている中、豊田合成は「GaN(窒化ガリウム)」に挑んでいる。狙うのは、電動化の加速をにらんだモビリティーやエネルギーソリューションへの貢献だ。GaNは、現行のSi(シリコン)、そして今まさに普及期を迎えているSiC(シリコンカーバイド)を上回るポテンシャルを持つ。条件が整えば、将来の車載パワー半導体の筆頭に名乗りを上げそうだ。 同社がGaNの研究に取り組み始めたのは、1980年代にさかのぼる。実現困難とされてきた青色発光ダイオード(LED)の発光源として有力視し、後にノーベル物理学賞を受賞する名古屋大学(当時)の赤﨑勇氏や天野浩氏らと共同研究を重ねた。青色の発光を初めて確認した場所も、豊田合成の研究室だったという。照明用のLEDがコモディティー化する中、パワー半導体で再び GaNの最先端を目指す。 同社はこのほど、単結晶の製
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