いくら休んでもなかなか疲れが取れないのはなぜなのか。長年休養について研究し、日本リカバリー協会の代表理事を務める片野秀樹さんは「『働き、疲れたら、休む』を繰り返すだけだと、休んでもフル充電に戻せないまま、活動に戻るようなもので、サステナブル(持続可能)になっていない。次の活動に移る前に、休養のほかにもう1つ、疲労を打ち消すような要素を加えるといい」という――。(第1回/全3回)
いくら休んでもなかなか疲れが取れないのはなぜなのか。長年休養について研究し、日本リカバリー協会の代表理事を務める片野秀樹さんは「『働き、疲れたら、休む』を繰り返すだけだと、休んでもフル充電に戻せないまま、活動に戻るようなもので、サステナブル(持続可能)になっていない。次の活動に移る前に、休養のほかにもう1つ、疲労を打ち消すような要素を加えるといい」という――。(第1回/全3回)
小林製薬の「紅麹コレステヘルプ」による健康被害の報告が相次いでいる。どこに原因があったのか。科学ジャーナリストの松永和紀さんは「サプリから検出された『プベルル酸』が原因である可能性が指摘されているが、専門家は『現時点では断言できない』と慎重な姿勢を崩していない」という――。 どうやってサプリに「異物」が混入したのか 小林製薬の紅麹サプリメント問題は入院患者が3ケタを超え、死者も5人と報告されています。台湾でも、被害報告が出てきました。サプリと症状の因果関係は確定していませんが、原因物質としてサプリから検出された「プベルル酸」の疑いが浮上しています。 前回、〈なぜ「紅麹サプリ」で死亡例が起きたのか…健康に良いとされる「機能性表示食品」の制度的な欠陥〉と題して、制度の問題点を探りました。 今回は、「プベルル酸の性質」「どのような経路でサプリメントに混入したと考えられるのか」「こうしたカビが作る
健康的にお酒を楽しむには、どんなことに気をつければいいのか。筑波大学医学医療系の吉本尚准教授は「飲む量やアルコール度数を減らすといった『減酒』を意識したほうがいい。ただ、健康を考えるなら飲まないのに越したことはない」という――。 ※本稿は、吉本尚『減酒セラピー』(すばる舎)の一部を再編集したものです。 「酒は百薬の長」は本当か お酒にまつわる「空気」の変化は、日本だけのものではなく世界的な潮流です。確かにお酒には人と人との出会いを演出したり、料理をおいしくいただけるといった良い面もありますが、「実は少量でも飲むこと自体に害があるんじゃないか?」と考える人が増えてきたのです。 一般の生活者の実感からも、アルコールに関する研究者や医師たちの知見からも、そうしたことが近年、課題として浮かび上がってきたという感じです。昔から「酒は百薬の長」と言われてきました。「少し飲んだほうが長生きする」なんて、
すべてが「コスパ化」している 今日、資本主義的な考え方は経済活動だけにとどまらず、投資・資本・費用対効果(コスパ)といった概念は色々な場面に適用されがちです。そうしたなか、タイパ(タイムパフォーマンス)という言葉も登場し、三省堂の「今年の新語2022」の大賞に選ばれました。 文化資本や社会関係資本といった言葉が象徴するように、社会学者たちは学歴・教養・礼儀作法・人間関係・健康・美容・マインドまでをも資本財とみるようになり、実際、それらは投資やリスクマネジメントの対象にもなっています。してみれば、現代人の行動の広い範囲が資本主義の思想に基づいていて、この思想はよく内面化されていると言えるでしょう。 コスパやタイパといった考え方は広く浸透し、たとえば動画サイトを二倍速で視聴するような習慣も生み出しました。人生についても、「コスパの良い人生」などといった言葉が語られ、賛否はあるにせよネットメディ
特効薬がない場合、そのこと自体への不満もあって、検証が不十分な薬であっても「効く」というウワサがあると「飲んでみたらいい」と思いがちだ。しかし内科医の名取宏さんは「効果を誤認することはよくある。検証不十分な薬にはリスクもあるため、判断は保留すべきだ」という――。 効果に乏しい薬が存在した理由 現在、薬が承認されるまでには長時間かけて検証が行われます。新薬候補の物質が承認に至る確率は数万分の1ともいわれるほどです。 基礎研究や動物実験で一定の安全性や効果が期待できる新薬候補の物質を絞り込んだのち、通常は少数の健康な成人を対象に安全性や薬物動態を評価する第1相試験、比較的少数の患者さんを対象に安全性と有効性を評価する第2相試験、多くの患者さんを対象にした第3相試験を経て、十分な安全性と有効性が確認できた薬だけが承認されます。市販後調査といって承認・発売された後も検証は続きます。いったんは保険適
最近、オーガニック給食を推進する動きがある。しかし、小児科医の森戸やすみさんによると「オーガニックだから健康にいいとは限らない。それよりも安全が確かめられている慣行農業の作物で十分に栄養のある給食を提供したほうがいいのでは」という――。 参議院議員・川田龍平氏の炎上 「子どもの健康が大切なのでオーガニックの食品を選んでいます」、「有機栽培の野菜しか買いません」などと言う人は少なくないでしょう。ちなみに私が住んでいる地域の選挙公報には、議員に立候補している人が数人「オーガニック給食推進」を公約に掲げていました。 昨年12月7日には、立憲民主党の参議院議員である川田龍平氏が、X(旧Twitter)に「アメブロを投稿しました。『【お知らせ】オーガニックな食事で、子どもの発達障害の症状も改善!』」と投稿し、炎上しました。発達障害は生まれ持った特性のひとつです。また、ここで危険だと書かれている農薬・
政治資金規正法で裏金は処罰できない 政治資金パーティーを主催した派閥側については、議員側に裏金として渡した金額を収入から除外して政治資金収支報告書に記載した場合には、パーティー収入の過少記載は明らかだ。 しかし、ノルマを超えた販売をそのまま議員が取得するケースでは、派閥が実際のパーティー券収入を把握していない可能性もあり、政治資金パーティー収入の過少記載の具体的な認識の立証は困難も予想される。また、長年にわたって慣行的に行われていたとすると、派閥の幹部の関与についての具体的事実を明らかにすることは容易ではない。 それ以上に問題なのは、裏金を受領した議員側を、収支報告書の虚偽記入罪に問えるかどうかだ。 そこには、国会議員等の政治家個人が、裏献金を受領した場合、政治資金規正法違反での処罰が困難だという、私がかねてから指摘してきた政治資金規正法の重大な欠陥が立ちはだかる。 今年3月に公刊した『“
畳の上にちゃぶ台を置けば、6畳間はダイニングへ 日本の住宅の照明は、部屋のすみずみまで均一に照らすものが久しく好まれてきた。天井の真ん中に鎮座する巨大なシーリングライトがその象徴である。 いわゆる高級マンションを除けば、賃貸物件の照明はいまも天井の真ん中に取りつけるものが一般的だ。シーリング(ローゼット)と呼ばれる照明器具の取付口が天井面にすでにあり、賃借人はその金具を目がけて好みの照明をセットする。 嫌なら使わなければよいのだが、ありがたく使わせてもらっている人が大半だろう。借家歴30年の私も、使わなかったことは一度もない。 部屋のすみずみまで均一に照らすあかりは、「部屋の用途を規定しない」という昔ながらの暮らし方にも都合がよかった。 部屋の用途とは、部屋で何をするのかという主な利用目的のことだ。現代における部屋の用途は平面図を広げればすぐに分かる。キッチン、ダイニング、主寝室……部屋の
「国民に負担をより強いてまで、開催にこだわるのはなぜなのか」(朝日新聞)、「大阪万博、中止でええやん」(東京新聞)といった声すらあがる。さらにパビリオンなどの工事の遅れが深刻化しており、「やりたくても間に合わないのではないか」と危惧する声も聞かれる。いったい万博はどうなるのか、そして万博は日本に何をもたらすことになるのだろうか。 想定来場者数2820万人、経済波及効果は2兆円――。大阪湾にある夢洲ゆめしまで2025年4月13日から10月13日まで開かれる大阪2度目の万博は、その経済効果が繰り返し強調されている。逆に開催に疑問符を投げかける向きは、経済効果は見込めないとか、税金をムダに投じるだけだと言う。いずれも損得勘定が先に立っているわけだ。万博は一時の経済対策と同じなのだろうか。 万博誘致の影の立役者は作家の故・堺屋太一氏 2025年の大阪・関西万博誘致の影の立役者は、作家の故・堺屋太一
死ぬということはどういうことなのでしょうか。 誰にもわかりません。ただ、人々にもう会えなくなることだけは確かです。 それについて、私は次のように考えることがあります。 絶海の孤島に、豪華クルーズ船も顔負けの施設が完備した巨大ビルがあります。世界中の料理と美酒が食べ飲み放題です。ショーや音楽などを楽しめ、ジムやプールで運動ができ、邸宅のような居室でくつろげます。 ただし、外界とは遮断しゃだんされています。出ることはできず、外の情報を得たり、情報を発信したりはできません。 死が近づいた時、神様から、「このビルに入れば少し長生きできるが、行くか? ただし、ビルから出て現世に戻れば、これまでの記憶を失い、現世で築いた人間関係から財産や業績まで、すべてゼロになる」と聞かれたら、どう答えるでしょう。 「行く」を選んだ場合、最初はビルの生活を大いに楽しむでしょう。しかし、時がたつにつれ、毎日会う人もやる
なぜ「少母化」になるかといえば、出産する対象年齢の女性の絶対人口が減っているからです。 出生の9割を占める20~39歳の女性の総人口は、国勢調査によれば、1995年の約1708万人に対して、2020年は約1317万人と24%も減少しています。これは、1995年の当該年齢者がちょうど第2次ベビーブーム期に生まれた層であるのに対して、2020年の当該年齢者は1981~2000年生まれであり、すでに少子化が始まっている頃に生まれた層だからです。 本来であれば1990年代後半あたりに第3次ベビーブームが来るはずでしたが、それは来ませんでした。この「失われた第3次ベビーブーム」が発生した段階で、以降の少子化は決定づけられたのです。 しかし、絶対人口減だけが決定要因ではありません。ただでさえ減った人口に加えて、未婚率が上昇し、当該年齢の有配偶女性人口が減った。つまり、婚姻数が減ったからです。 以降、1
「ネットのニュースはタダが当たり前」になった 「ヤフー」など主要ポータルサイトで読まれるニュース記事の対価は、1回の閲読あたり平均で0.124円――。 公正取引委員会が9月下旬、ニュースポータルサイトを運営するヤフーやグーグルのIT大手(プラットフォーム事業者)と、記事を提供する新聞社などの報道機関との取引実態について調査した報告書をまとめ、初めてネットにおけるニュース記事市場の概要が明らかになったが、記事のあまりの安さに報道関係者を中心にショックが広がっている。 「ネットのニュースはタダが当たり前」という風潮が広がる中、多くの記者が周到に取材して書いた記事がIT大手に“激安”で買いたたかれている実情は、世界の報道機関にとって共通の悩みだ。 ネット上でフェイクニュースやヘイト情報が蔓延し社会生活に大きな影響が出ているだけに、民主主義の根幹となる「正確で公正なニュース」の重要性は増すばかり。
センスを身につけるための2つの能力 街中にある看板や企業のポスター、道路の標識、電車内の広告、商品パッケージ、WEBサイト……私たちの身の回りには、ありとあらゆるところに数えきれないほどのデザインが溢れています。普通の人にとっては「オシャレだなぁ」とただ眺めるだけでスルーしてしまうもの、あるいは「煩わしい」と感じるものかもしれません。 一方で、プロのデザイナーにとってはデザインセンスを養う教材のひとつとなっています。日常生活で目にするデザインには、ひとつひとつに制作者の意図やこだわり、伝えたいメッセージが込められているからです。 デザインを意識的に「見る力」、そのデザインが施された意味を想像・考察して「言語化する力」を身につけることでセンスが磨かれ、実践の場で活かせるようになります。 「赤色」に着目したときに見える世界 それでは一度、この記事を読んでいる画面から目を離して辺りを見渡してみて
尿酸値が高い人は「血管が痛み始める段階」 尿酸値は、メタボ健診の必須項目には入っていませんが、とても大切な検査項目です。 尿の中に排泄されることから「尿酸」という名前がついていますが、尿検査ではなく、血糖値やコレステロールと同じく血液検査で調べます。 そして、尿酸値が基準値を超えていると、血管障害が少し進み、「血管が傷み始める段階」になっていると考えられます。 尿酸とは、腎臓から捨てられる老廃物の1つです。抗酸化物質でもあるので、必ずしも悪者ではなく、ある程度の量は体に必要な物質です。中には遺伝的に尿酸がつくれず、極端に尿酸値が低い「低尿酸血症」の人がいます。そういう人は活性酸素によって血管が傷み、動脈硬化が進みやすい可能性があります。 一方、尿酸は多過ぎても血管の内皮細胞に炎症を起こし、やはり血管障害を進めてしまいます。 予防のためには6.0mg/dL以下をキープ 高尿酸血症の診断には「
そこで、今回の記事では「身長」の影響について、より深堀りしてみたいと思います。 実はこの身長ですが、結婚だけでなく、仕事や幸せといった人生のさまざまな側面に影響することがわかっています。そして、多くの学術研究の結果によれば、高身長の人ほど得をしているのです。 以下で身長が人生に及ぼす意外な影響について、詳しく説明していきたいと思います。 アメリカよりアジアのほうが身長と所得の関係が強い 身長と仕事の成功に関して、数多くの学術研究の蓄積があります。 まず、所得との関係を見ると、身長が高い人ほど所得が高いことがわかっています。この傾向は国によって異なっており、欧米と比較してアジア地域ほど上昇幅が大きくなっています(*1)。具体的には、アメリカでは身長が10cm高くなると、所得が約4%伸びますが、アジア地域では所得が約9%伸びることがわかっています。 世界的に見て相対的に身長がやや低いアジア地域
岸田文雄内閣の支持率が低迷している。だが、野党第1党である立憲民主党の支持率も伸びていない。なぜ立憲は世論の受け皿になっていないのか。2017年に立憲を結党し、21年まで代表を務めた衆院議員の枝野幸男氏(59)に、ジャーナリストの尾中香尚里さんが聞いた――。(前編/全2回) 「枝野幸男」と「菅直人」は体質が違う 今年で政治家生活30周年を迎えました。ついこの間、初当選したばかりのような気がします。「あっという間だったな」という印象です。 30年間の仕事の中で、政治家としての今の私を形作ったのは、新人議員時代に取り組んだ薬害エイズ問題です。あの時は「自社さ」の橋本政権で、私はさきがけ所属の与党議員でした。(危険な非加熱製剤を多くの血友病患者に投与し、HIVに感染させてしまった)製薬会社や厚生省(現厚生労働省)の追及はもちろんでしたが、被害者の皆さんのニーズに応えてどう現実を動かすか、という仕
リベラルと言われる言論人は無抵抗だった ――東さんは6月19日に『観光客の哲学 増補版』(ゲンロン)を出しました。2017年に毎日出版文化賞を受賞した既刊に新章2章2万字を追加されています。さらに今夏には姉妹編となる20万字の新著『訂正可能性の哲学』を刊行予定です。なにが執筆の動機になったのでしょうか。 【東】ここ数年、特に新型コロナとウクライナ戦争を通じて強く思ったことがあります。それは、人々はSNSなどでさまざまに理屈を並べても、何かあればすぐ一方向に流れされてしまうということです。そして知識人、言論人と呼ばれる人たちは、その大きな流れにほとんど抗うことができない。 例えば、リベラルを自認する言論人の多くはもともと生権力を批判していた。だからコロナが蔓延したときは政府による国境封鎖やロックダウンにみんな反対すると思っていました。しかし実際にはすぐ賛成した人が多かった。これはどういうこと
「俺が自由な世界を創る」をテーマに活動してきたゆたぼん 4月24日、少年革命家を標榜している沖縄在住の14歳の少年「ゆたぼん」(本名:中村逞珂ゆたかさん)が「【ご報告】ガチで勉強してみた」(※2023年5月24日現在は「【みんなの学園】で勉強してみた」というタイトルに変更されている)という動画を公開し話題になりました。これがファンの期待を裏切る内容だったのか、動画公開前には約6万人だったTwitterのフォロワーも執筆時点(5月22日)で約3万6000人に激減しています。 旬は過ぎたとはいえ、メッセージ性が強くて面白かったんですよね。いい感じで「勉強することや、学校に通うことは本当に正しいと思っているのかお前ら」という直球は、いろんな人が共感し、いろんな人が煽られてムカついてました。 まだ小さいゆたぼんの健気な姿とその父親の中村幸也さん、および周りにはびこる有象無象やメンターを名乗るネット
文部科学省のGIGAスクール構想により、いまや小中学生もタブレット端末などを所有する時代。スマートフォンが子どもの脳に与える影響を研究している東北大学加齢医学研究所助教の榊浩平さんは「実験したところ、言葉を調べたとき、スマホで検索した単語は1つも記憶に残らず、紙の辞書で調べた単語は5つのうち2つが記憶できた。便利だからと言って、記憶をアウトソーシングしてはいけない」という――。 ※本稿は、榊浩平(著)、川島隆太(監修)『スマホはどこまで脳を壊すか』(朝日新書)の一部を再編集したものです。 GIGAスクール構想で子ども1人が1端末を持つように パソコンやタブレット端末などのデジタル機器を用いた教育は、子どもたちの脳や学力へどのような影響を与えるのでしょうか? 2019年12月、文部科学省はGIGAスクール構想を発表しました。「1人1台端末」と、「高速大容量の通信ネットワーク」を整備することで
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