避難民が密集するパレスチナ自治区ガザ南部ラファで、イスラエル軍の本格侵攻の危機が高まっている。大規模な殺害に直面しながら国際社会が止めることができていない中、日本の大学では米国を発端に拡大する抗議デモに連帯する動きが相次いでいる。若い世代が上げる声は、停戦を促す力となるか。分断と憎悪の連鎖を断ち切るすべを考えた。(西田直晃、木原育子、安藤恭子)
宮崎雅雄(みやざき・まさお) 神奈川県横須賀市出身。岩手大農学部卒業、同大学院連合農学研究科博士課程修了後、理化学研究所や東海大の研究員などを経て、2011年、母校の岩手大に特任准教授として着任。20年から現職。21年、マタタビ反応についての研究成果を米科学誌で発表した。動物の嗅覚研究に取り組み、企業との製品開発などにも取り組む。ネコよりイヌ派で、イヌの研究もしており、家ではイヌを5匹飼っている。 研究室で飼育しているネコ「セル」を抱く岩手大教授の宮崎雅雄さん。世界的な科学誌が名前の由来で、他に「サイエンス」など17匹のネコがいる=盛岡市の岩手大で ネコにマタタビをあげると、転がったり葉をなめたりかんだり。日本では300年以上前から知られ、「マタタビ踊り」とも呼ばれるネコの不思議な反応で、その理由は「マタタビの匂いを嗅いで酔っぱらっているから」と考えられてきました。岩手大農学部教授の宮崎雅
同性婚を認めない民法や戸籍法の規定が憲法違反だとして、全国の同性カップルらが国を訴えた裁判で、3月14日の札幌高裁判決(斎藤清文裁判長)は「憲法24条1項に違反する」との初判断を示し、「同性間の婚姻も異性間と同じ程度に保障している」と踏み込んだ。憲法学者はこの判決をどう受け止めたのか。ポイントや意義を、憲法を専門とする慶応大法学部の駒村圭吾教授(63)に聞いた。(奥野斐) 同性婚訴訟 戸籍上、同性の2人の結婚を認めない民法や戸籍法は憲法違反だと訴えた裁判。原告には、戸籍上はともに女性だが、一人がトランスジェンダー男性で、男女として暮らすカップルもおり、原告らは「同性婚」ではなく、「婚姻の平等」を求める「結婚の自由をすべての人に」訴訟と呼んでいる。2019年に札幌、東京、名古屋、大阪、福岡の5地裁に提訴。21年に東京地裁に追加提訴。これまでの地高裁判決7件のうち「違憲」「違憲状態」は6件に上
ロシアのプーチン政権による侵略開始から3年目に入ったウクライナ。民族と国家の存亡をかけて、果敢に抵抗を続けるウクライナの社会に最も精通した日本人といえば、首都キーウでウクライナの国営通信「ウクルインフォルム」日本版編集者の平野高志氏(42)を置いて他にいないだろう。平野氏は3日、ウクライナの市民社会をテーマにした論文で「ウクライナ研究会」(岡部芳彦会長)の研究奨励賞を受賞したばかり。ウクライナのメディアや社会、対ロ関係、日本の支援への反応などについて縦横無尽に語ってもらった。(編集委員・常盤伸) 平野高志 1981年生まれ。東京外国語大学ロシア・東欧課程卒。リビウ国立大学修士課程(国際関係学)修了。在ウクライナ日本大使館専門調査員を経て、2018年以降、ウクルインフォルム通信日本語版編集者を務める。キーウ在住。著書は「ウクライナ・ファンブック」。写真家としても活動中。
なぜ女性は「昇進」できないのか。 川崎市職員の佐藤直子さん(50)は長年、自治体職員として働きながら感じてきたモヤモヤの正体を解明しようと、自治体の女性職員のキャリア形成などについて大学院で研究に取り組んでいます。女性は昇進したがらない? 女性管理職が就く部署は決まっている? 現状の背景には何があるのか、変えていくことはできるのか、話を聞きました。(小林由比、北條香子) 佐藤直子(さとう・なおこ) 川崎市こども未来局青少年支援室子どもの権利担当課長。1998年入庁後、児童館での青少年健全育成業務、公務災害・通勤災害事務、区役所での市民協働まちづくり業務、総合計画などの庁内調整事務、市長への手紙、コールセンターなどの公聴担当、幼児教育担当などを担当してきた。自身を含めた女性職員のキャリアパスに関心を持ち、2018年から研究を開始。22年4月から埼玉大経済経営系大学院博士後期課程。専攻は労働経
2015年7月、群馬県桐生市に住む黒田正美さん=仮名=の携帯電話が鳴った。声の主は同市福祉課の職員だった。 当時、黒田さんは30代後半。父の杉本賢三さん=仮名、当時(61)=と市営住宅で同居していたが、結婚で独立し、杉本さんは単身生活を送っていた。駆け付けると、ライフラインは全て止められ、石油ストーブの燃焼筒に外で拾い集めた木くずを入れてマッチで着火し、わずかに残ったコメを煮炊きしていた。窮状を見かけた近所の住民が市へ通報したのだという。 杉本さんは料理人として働いていたが、心臓疾患などによる体調悪化で就労困難な状態が続いていた。黒田さんは市福祉課に相談したが、「家族で支え合って」「実家に戻りなさい」と相手にしてもらえなかった。同年8月、杉本さんはやむを得ず市内の実家で暮らす妹、黒田さんにとっては叔母の家に身を寄せる。
過激なポーズや未成年の出演が確認された「水着撮影会」が埼玉県営プールで開かれていた問題で、所沢市の市民団体が2日、市内で「若い女性の半裸を撮影するイベントが公共施設で開催されていることを知って、県に意見を出してほしい」と街頭で呼びかけた。 街頭活動をしたのは「所沢市民が手をつなぐ会」。メンバーの荻原みどりさん(75)は「女子中学生のモデルに、男性が何十人も群がって撮影する様子をネットで見て驚いた。性を商品化した営利目的の撮影会を、なぜ県の施設でやらせるのか疑問だ。県民として恥ずかしい」と話した。荻原さんらの呼びかけに「今度中学生になる娘がいるので関心を持った」と話す通行人の男性もいた。 撮影会が開かれていた3カ所の県営プールを管理する県公園緑地協会は昨秋、有識者の検討会を設置。検討会がまとめた提言をホームページで公開し、県内在住・在勤の人を対象に6日まで意見を募集している。その後、新ルール
石川県で最大震度7を観測した能登半島地震では、被害が甚大な輪島市や珠洲市など奥能登地方を中心に道路の損壊が激しく、通信状況も悪化したため、行政や自衛隊が避難所に支援物資を届ける作業がスムーズに進まなかった。また、行政の指定避難所に入れなかった被災者らは自主的に避難所を開設し、自力で物資を調達ししのいでいた。発生から8日で1週間。避難所の課題を探った。(高橋雅人、武藤周吉、郷司駿成、加藤壮一郎)
政府は5日、能登半島地震の被災地対応に当たる自衛隊員を約5千人に拡充した。発生初日から段階的に投入数を増やしている。甚大な被害が出た半島の先端地域は当初陸路が寸断され、ヘリコプターや艦艇による人員輸送が中心だった。徐々に陸路による支援を増強している。部隊の展開が遅いとの批判も上がっているが、岸田文雄首相は記者団に「与えられた条件で最大限投入してきた。過去の災害と比べて小規模だとの指摘は当たらない」と反論した。 立憲民主党の泉健太代表は5日「自衛隊が逐次投入になっており遅い」と政府対応に疑問を呈した。16年4月に起きた熊本地震で、震度7の「前震」があった2日後に自衛隊規模を1万5千人とした前例との比較が念頭にある。 首相は、熊本には駐屯地などに元々1万人を超える規模の自衛隊員がいたとし「今回は地元に大規模な部隊がない」と条件の違いを指摘した。木原稔防衛相は、航空機の人員輸送には限度があるとし
石川県で最大震度7を観測した能登半島地震で、人命救助などのために派遣されている自衛隊員は、5日時点で約5000人となった。政府は、地理的条件や近隣の部隊配置などに違いがあり、単純比較できないとするが、2016年に震度7を記録した熊本地震の5分の1にとどまる。野党からは、政府の初動対応の遅れを批判する声も出ている。 防衛省は地震発生翌日の2日、陸海空自衛隊の指揮系統を一元化した統合任務部隊を1万人規模で編成した。ただ実際に現地で活動するのは2日の段階で約1000人、3日は約2000人、5日も約5000人にとどまっている。発災から5日目で約2万4000人が活動していた熊本地震と比べて規模が小さく見える。 立憲民主党の泉健太代表は5日、記者団に「自衛隊が逐次投入になっており、あまりに遅く小規模だ」と批判。別の立民幹部も「物資が届かず、被害の全容が明らかにならないのは、自衛隊員が足りない影響だ」と
群馬県桐生市が生活保護利用者の50代男性に対し、原則として1日1000円しか支給しなかった問題を巡り、別の50代男性も今年6~10月に週払いで分割支給を受け、1カ月当たりの総額は支給決定額の半分程度にとどまっていたことが分かった。2人を支援する仲道宗弘司法書士は「最低限度の生活を侵害する運用が、日常的だった可能性がある」と指摘した。 仲道氏によると、新たに判明した男性は病気で就労困難となり、5月26日に月額約7万1000円の支給が決まった。しかし、桐生市は金銭管理のため家計簿を付けるよう指導した上で、支給は週に1回1万円程度。6月は約3万1000円、8月は4万1000円など決定額の半分程度にとどまった。
作業員の身体汚染が発生した現場。上から延びるオレンジ色のホースが外れた=東京電力福島第1原発で(東京電力提供) 東京電力福島第1原発(福島県大熊町、双葉町)の汚染水を浄化処理する多核種除去設備(ALPS)の配管洗浄中に廃液が飛び散った事故で、東電と下請けの東芝エネルギーシステムズ(川崎市)は16日、原因の分析結果を発表した。入院した作業員2人は、過去の作業経験から廃液は飛散しないと考え、ルールで定められたかっぱを着用せず、被ばくにつながったと指摘した。 両社によると、事故は10月25日に発生。配管の洗浄時間が長引き、高濃度の放射性物質を含む廃液の発生量を抑えようと、当初予定していなかった配管の弁を閉めて洗浄液の流れを抑えた。その結果、配管内の圧力が高まり、廃液をタンクに入れるホースが外れて飛散。タンク近くにいた2人にかかった。監視役の作業員もかっぱ着用を指示せず、予定外の作業員の配置換えや
性被害を知った母は自ら命を絶った…遺書につづられた、ジャニーズ事務所に写真と履歴書を送ったことへの後悔 旧ジャニーズ事務所(現・スマイルアップ)創業者のジャニー喜多川氏(2019年死去)による性加害問題で、被害に遭ったジャニーズJr.(ジュニア)の元レッスン生の男性(55)が取材に応じ、母親に性被害を打ち明けた1カ月後、母親が自殺したことを明かした。遺書には、男性の写真と連絡先を事務所に送ったことへの後悔と謝罪が書かれていた。母親への告白を40年以上悔やみ続け、「自分の人生はめちゃくちゃにされた。事務所が、今後も子どもを育成しマネジメント業務を続けることはあってはならない」と怒りを込める。(望月衣塑子)
2023年度から5年間の防衛費を総額43兆円とした政府の防衛力整備計画を巡り、円安や資材高などの影響で装備品の単価が跳ね上がり、既に計画額より8000億円以上超過する恐れがあることが、本紙の試算で分かった。防衛省が調達数量や単価を公表していない装備品も多く、本紙の試算は一部にとどまる。岸田政権が決定した巨額の防衛費の超過額はさらに膨らみ、国民の負担がより重くなる懸念が早くも高まっている。(川田篤志) 防衛費の増額 政府は昨年末、国内総生産(GDP)比で1%程度で推移していた防衛費について、5カ年計画の最終年となる2027年度には関連費と合わせて2%に倍増する方針を決めた。27年度には年約11兆円となる。GDP比2%は、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める共通目標で、自民党も選挙公約で2%への引き上げを求めていた。
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