学問一般に言えることだが、偉大な古典とか難解な書物というものは、 自分で本当に読んでる人は意外なほど少ない。別に外国語の原書に限 らず、翻訳さえあまり読んでないことが多くて、大抵が何かの解説本の 請け売りとか、孫引き(元の著作からの引用の引用)に過ぎないのだ。 これは、専門家レベルでさえ珍しくないことだと思う。 日本の人文系の学者に限ると、欧米との言語の差が顕著だから、自分 の専門分野に限っては、それなりに原書は読んでるだろう。ところが理 系の学者の場合、古典的著作に関してはほとんど無頓着な人が多い ように思われる。これは一応理解できることで、要するに理系は、最新 の動向とか一般的事実を知ってれば十分なことが多いわけだ。 しかし、理数系科目の中でも特殊な位置にある数学について、その根 本を考える時、すなわち、数学基礎論的な考察を行う時には、例えば 古代ギリシアのユークリッド(=エウクレイデ