1915年に出版された「お艶殺し」の初版本。美しい装丁と箱が付いていることで、古本市場では30万円の値が付くという 文豪谷崎潤一郎(1886~1965年)の初版本を集めた冬の特設展「初版本Onパレード~名作たちのデビュー~」が、兵庫県芦屋市伊勢町の谷崎潤一郎記念館で開かれている。最高30万円の価値がある貴重な初版本など、常設展と合わせて約100点の資料が並ぶ。(名倉あかり) 「本という形になって世に出るまでが自分の作品である」と、装丁には強いこだわりを持っていたという谷崎。会場には500部限定で発刊された木箱入りの「蘆刈(あしかり)」や、色とりどりの和紙がふんだんに使われた「都わすれの記」など、ぜいたくな初版本が並んだ。 中でも目を引くのが「お艶殺(つやころ)し」の初版本。鮮やかな着物姿の女性が表紙を飾り、30万円で取引されているという。黒と朱の漆塗りがつややかな「春琴抄(しゅんきんしょう