作家と一緒に旅をし、人と出会い、考えながら歩く。星野博美さんの作品は、気取らない文体なのに中身が濃いという、不思議な味わいだ。生まれも育ちも東京だが関西風味を感じるのは、ご先祖の血だろうか。今月出た最新刊の舞台であり、祖父以来、家族の歴史を刻んできた町、東京・五反田で待ち合わせた。 祖先のルーツ探る作品から想像していた感じより、ずっと落ち着いた雰囲気だ。 「新聞記者はアポが取れていいですね。ノンフィクションを書いていますといっても、フリーだと取材が難しいことが多いです」 当て付けではなく、率直な感想なのは口ぶりで分かる。 「アポが取れない代わりに直感で気になるところに行く。出会いや縁を大事にするようにしています」 まず動く、という感じが作品に表れている。房総半島の漁師だった祖先のルーツを探った「コンニャク屋漂流記」では、訪れた和歌山市で、駅で出会った掃除のおばちゃん、送迎マイクロバスで現れ