冷泉家に伝わる古今伝授箱から見つかった藤原定家直筆の「顕注密勘」=京都市上京区で2024年4月16日、加古信志撮影 小倉百人一首の選者で知られる鎌倉初期の歌人、藤原定家は自らの字を悪筆、つまり下手だと日記「明月記」に記している。確かに特徴あるクセ字で墨を多めに使い、一文字一文字がはっきりしている。平安貴族流のかな文字を細くつなぐ流麗さとは異質だ▲その独特な筆跡が、約800年を経て世を驚かせた。定家の子孫、冷泉(れいぜい)家の京都にある蔵から、定家直筆の古今和歌集の注釈書「顕注密勘(けんちゅうみっかん)」の原本が見つかった。関心のある人は、今月報じられた文書の写真に「定家の書体だ」と心躍らせたことだろう▲宮中の歌会などを担った冷泉家の所蔵品は、「文書の正倉院」ともいわれる。今回は「古今伝授箱」という秘伝の木箱を約130年ぶりに開けての発見という。定家自ら古今和歌集の注釈に加筆した史料価値は高