毎週日曜日更新のウェブマガジン。 俳句にまつわる諸々の事柄。 photo by Tenki SAIBARA 最初に用語の意味を確認しておきたい。 文法の「完了」は単なる終了ではない。「完了の助動詞」は次のように定義される。「動作・作用の完了し、次にある何らかの状態が発現していることを表わす助動詞」(『日本文法大辞典』)、「事態の発生、完了、完了した状態の存続、それらの確認などの意を表わす」(『日本国語大辞典』)。 過去の助動詞「し」の完了の用法は、近現代の俳句短歌にはおびただしく見られるが、正しく認識されていない。昨年、たまたま上田信治の過去のブログ(「胃のかたち」平成19年4月8日)を見て、かつてこの「し」をめぐって論争があったことを知り、非常に興味深く思った。 ● 論争は以下の通り。 池田俊二が『日本語を知らない俳人たち』(平成17年)で、現代の俳人が、過去の助動詞「し」を完了の意味に