ぜんぶの俳句のデータベースです
LOTUS研究会「斎藤秀雄俳句作品合評会」のお知らせ LOTUS研究会にて、拙作を読んでいただけることとなりました。 おそらく、先日、第8回攝津幸彦記念賞で准賞となった「藍をくる」30句(『豈』66号)を中心に、読むのではないかと思います。 気軽にご参加いただけると、嬉しいです。 資料配布と、Zoomのご案内のため、九堂夜想さんか、私(斎藤秀雄)にメールアドレスをお知らせください。 ■LOTUS研究会2024(1月) ※Zoomによるオンライン会合 ・日 時:2024年1月27日(土)午後1時~5時 ・テーマ:「斎藤秀雄俳句作品合評会」 内 容: 『吟遊』100号記念自選俳句作品7句 「第7回攝津幸彦記念賞2022」准賞30句 「第8回攝津幸彦記念賞2023」准賞30句(計67句) ・司 会:九堂夜想 ・リモート管理:丑丸敬史
■句会参加者(計16名)※敬称略 《LOTUS》丑丸敬史(ZOOM管理)、奥山人、小野初江、九堂夜想、熊谷陽一、三枝桂子、酒卷英一郞(句会幹事)、高橋比呂子、古田嘉彦(司会)、松本光雄、無時空 映 《一般参加者》いなば也、斎藤秀雄、三上 泉、未 補、山田千里 ■一人三句出句(全四十八句)/三句選 ■最高点句(5点) 野灯りや物こそ影のゆきの花 九堂 夜想 〈句 評〉 ●灯りの下で「ゆきの花」が見えるわけじゃない。小さな「野灯り」の周りに広がる大きな暗がりにこそ「ゆきの花」が存在するというのである。中七の転倒は音韻の快楽によるが、そうした分析や説明はこの句にはつまらない行為に思えた。●氣配の一句。野燈(灯)りに物の影が仄かに浮き上がる。その實體はゆきの花であつた。ゆきの花とは六花、雪の結晶と考へる。野燈り、影、ゆきの花とモノトーンを連ね、あたかも墨繪の趣きだか、しか
短詩グラマトロジー 第十回:数装法 斎藤 秀雄 簡単に定義するなら「数の魔性を詩性に利用すること」となるだろうか。中村明は《数字に関連したことばを文章中にちりばめる修辞技法》(『日本語の文体・レトリック辞典』、東京堂出版)と定義する。これが修辞となりうるのは、《その模様と表面上の意味とで濃淡二重のイメージを仕掛ける》ことになるからだ(同前、「類装法」の項目。数装法は類装法の一種とされる)。たしかに数には数としての意味(何個、何ヶ月目、等)と、視覚的模様がある。 映画『マトリックス』では、主人公ネオの住居の部屋番号は101。これは、のちに自分がThe One(救世主)であると知ることの暗示であり(NeoがそもそもOneのアナグラムである)、世界がプログラムされたMatrixという仮想現実であることの暗示であり(二進法)、またオーウェル『一九八四年』に登場する拷問・洗脳
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議論の手がかりとして、極端に複雑性を縮減した図式を提示することからはじめたい。〈作品(artwork)〉に向き合うときに体験される、〈詩(Poesie, poeticality, poetria)〉との出会い方には、次の二通りのタイプがあるように、私には思われる。 A:脳髄にズカズカと這入りこんでくるように感じられるタイプ B:その門を通ろうとすると、バチンと弾かれ、拒まれたように感じられるタイプ AとBと、どちらが良いとも悪いともいうことはできない。たんに二通りのタイプがある、というだけである。また、個々の作品に帰属される性質についても述べてはいない。あくまでも鑑賞者の体験として、鑑賞者に帰属される知覚の性質について述べている。ここでBは、〈詩〉と出会う前に拒まれているわけだから、いわば出会い損ねているのだが、「出会い損ね」という出会いのタイプもありうるだろう、と私には考えられる。この図
■句会参加者(計14名)※敬称略 《LOTUS》丑丸敬史(リモート管理)、小野初江、九堂夜想、熊谷陽一、三枝桂子、酒卷英一郞(句会幹事)、高橋比呂子(司会)、古田嘉彦、松本光雄、無時空 映 《一般参加者》いなば也、斎藤秀雄、三上 泉、未補 ■一人三句出句(全四十二句)/三句選 ■最高点句(5点) 言葉憑く 可惜夜ありて 春疾風 酒卷英一郞 〈句 評〉 ●発せられたことばが心身にまとわりつくような離れがたき夜ほど、前触れもなくやって来て、突然に去っていく。そんな可惜夜が、人生にあったほうがおそらく良いが、無かったとしても、不幸なわけではない。むしろ知らないないほうがいいかも。●情況は明け方であろうか。今作者は恵まれて言葉の豊穣の海にいる。なのにどんどん夜明けが迫ってくる。惜しみても余りあると言うのにその状況は容赦なくなのだ。また援護するように春疾
この連載の第六回で、「濫喩」を、中村明による定義を借りて《感覚の交錯や論理的な矛盾を抱えた比喩などを提示して刺激する修辞技法》(『日本語の文体・レトリック辞典』、東京堂出版)にまで拡張しておいたのだが、いま思えばこれは拡張のし過ぎであった。《感覚の交錯》(つまり共感覚的な表現)についていえば、むしろ〈異例結合〉と呼ぶべきかもしれない。例えば川端康成『雪国』には、異例結合が頻出する。「甘い丸さ」「静かな嘘」など。 さて、これを複数のフレーズにまたがって交差させたものが〈交差呼応〉である(とはいえ、のちにあげる例においてのように、必ずしも「異例」ではないものも含める。詩的効果が生じるかにのみ、焦点を合わせたい)。中村は《彗眼で聞き、地獄耳で見る》(同前)という例をあげている。
(水の奥処へ……) 斎藤 秀雄 水の奥処へ多くの私が移ってゆく いつか私と呼ばれることになる諸断片 まだ私になっていない未私 奥処――何にとっての? いくらかは底へ沈み いくらかはこなごなにほどけて散ってしまうだろう……。 底――何にとっての? 水の多くの領土 水蒸気になりかけている水 氷になりかけている水 粘性をそなえた水 浮かんだり沈んだり混じったりできない 速度の線が水の領土を区別して抑え込んでいる 速度の線のみがあって上下はないのかもしれない 未私はなかばほどけた布のような断片 ほつれた織物、多くの繊維が織られたもの さまざまな繊維、ナイロンの糸、ガラスの糸、骨、リボ核酸 ゆるい織り目を水がとおる 繊維がゆるんだり緊ったりする ゆるんだ繊維が別の繊維とまた織物をなす ほどけた繊維はほとんどどこかへ消えどこかに沈殿する 断片はそれぞれが知覚である 或るひとつの断片は引用である 「骨の
「ほんとうの日本」とは何か──R・H・ブライスの“金言”を読む 俳句に恋し、昭和天皇の「人間宣言」に関わった異能の英国人 香取俊介 脚本家、ノンフィクション作家 日本語に堪能な「外国人」は今や珍しくないが、日本語による独自の表現形式である俳句について、その真髄を理解し、やさしく語ることのできる外国人は、めったにいない。 明治維新前後、日本の文化、社会に強い興味をもち、海外に発信した外国人には、ラフカディオ・ハーンやアーネスト・フェノロサ、ポール・クローデルなどがいる。日本への興味と愛着を人一倍もちあわせていた彼らにしても、日本語独得の表現形式である俳句や川柳にまでは、なかなか踏み込めなかった。 そんな難事業を見事にやりとげる一方、太平洋戦争直後、GHQ(連合国軍最高司令官総司令部)と日本政府双方から信頼され、昭和天皇の「人間宣言」の起草にひそかにかかわった人物がいた。『ほんとうの日本──芭
「豈」65号(豈の会)、その「あとがき」(筑紫磐井)に、 今回は、第7回攝津幸彦記念賞の発表、特集・北川美美全句集、特集・兜太はこれからどう発展するかの続編で構成した。特に北川美美特集は、評論集『「眞神」考』の刊行に次いで北川美美の全句を伺う作品特集とした。評論集『「眞神」考』の特集は「ウエップ俳句通信」125号で大特集を組んだので「豈」ではあえて行わないこととした。これで北川美美の追悼企画は終えることが出来た。評論集及び全句集特集に当たっては、山田耕司氏並びに母堂の北川尚代様から様々なご協力をいただいたところであり、厚く感謝申し上げる。 とあった。特集「金子兜太はこれからどう発展するカ!!」の論考の執筆者は、董振華「兜太俳句と中国文化」、井口時男「金子兜太論余滴」、小野裕三「兜太の世界戦略」。以下に攝津幸彦記念賞(選考委員評は、夏木久・眞矢ひろみ・筑紫磐井・大井恒行)と、同人の一人一句を
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