酒井與喜夫著, カマキリは大雪を知っていた. (社)農山漁村文化協会 人間選書250 ISBN4-540-03114-7. 昆虫学会でこの本に書かれていることを批判した元弘前大学の安藤喜一先生の講演を聴いたのに、この本を見ないのは片手落ちだと思って図書館で借りて来て読んだ。 読んでまず感じたのは、この本の著者のモノの見方は生物を見る人の見方ではない、ということだ。生物に身近に接している人なら、雪に埋もれてしまうとオオカマキリ Tenodera aridifolia (Stoll, 1813) の卵は本当に死んでしまうのだろうか、ということを疑うのはあたりまえだと思うのだが、この本の著者は越冬中の卵の生存率を全く調べていない。論理展開は、雪に埋もれた卵はすべて死んでしまう、という思い込みを前提としたものとなっている。 卵嚢の高さと最深積雪の関係は87ページに示されているが、有意な相関がないの