台湾海峡で軍事の緊張が高まっている。よみがえってくるのは1996年3月、世界を震え上がらせた危機の記憶だ。大規模演習と称し、中国軍が台湾近海に次々とミサイルを撃ち込んだ。同月、初めて民主的な総統選をしようとする台湾を脅し、選挙を阻むためだ。中国国営のテレビからは連日、ミサイル発射の映像が流れる。当時、筆者が駐在していた北京は準戦時のような緊張に包まれた。ひとつ間違えば紛争となり、日本にも戦火は及びかねない。邦人救出の備えもままならない日本政府は、衝撃を受けた。【関連記事】・・「1週間、夜も寝られなかった」。橋本龍太郎首相(当時)は、周囲にこう苦悩を漏らした。後年、橋本氏に教訓を聞いた。自衛隊と米軍の連携を深め、あらゆるシナリオに備えておくことだ。彼はこう話し、「いざとなったら