「彼はいつも落ち着きがないけど、ADHDなんじゃないの?」「あの人のこだわりの強さは、アスペルガーっぽいよね」。――近ごろ、こんな会話が日常で交わされるのもめずらしくなくなってきた。ADHD(注意欠陥・多動性障害)もアスペルガー症候群も、広汎性発達障害と呼ばれ、ここ十数年のあいだに広く認知されるようになったもの。この発達障害に関する本が、子ども向けのものから大人向け、さらにはマンガまでと、いま急増しているのだ。 元記事はこちら 最近では、2012年「科学ジャーナリスト大賞」を受賞した新聞連載をまとめた『ルポ・発達障害:あなたの隣に』(下野新聞編集局 取材班/下野新聞社)や、同じく新書の『発達障害と呼ばないで』(岡田尊司/幻冬舎)などが刊行されたばかり。また、『発達障害の子どもたち』(杉山登志郎/講談社)は18万部のロングセラーとなり、昨年にはその続編『発達障害のいま』(杉山登志郎/講談
序 今から20年以上前のことである。まだ精神科医としての経験の浅かった筆者の悩みの種は,精神科病院に多数入院していた,診断のよくわからない患者であった。カルテからは,彼らの正確な診断を志そうとした歴代の主治医の苦悩と,いずれの診断(成人を対象とした精神科診断)もしっくりこないまま長期入院に至っている患者の歴史が読み取れた。彼らはいつしか病棟では,「統合失調症(精神分裂病)といわれてきた人」,「躁うつ病といわれてきた人」,「人格障害といわれてきた人」となっており,筆者には彼らの入院理由も今後の対応もわからず,途方にくれる日々が続いた。 診断がつかない人たちは,特にデイケアでも「目立つ存在」であった。彼らは,とりわけ集団の中に入ると,ほかのメンバー(多くは統合失調症患者)とは異なる,明らかに異質な雰囲気を放ち始めるのである。それはぎこちない会話,場にそぐわない声調,身体距離の不自然さ,本人にも
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