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ブックマーク / dain.cocolog-nifty.com (106)

  • 『わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる』という本を書いた

    心を揺さぶり、頭にガツンとらわせ、世界の解像度を上げるは、確かにある。 読前と読後で自分を一変させる、すごい(スゴ)だ。から得られた知は、行動を変え、習慣を変え、人生を変える。これホント、なぜならわたしの身に起きたことだから。そんな「人生を変える運命の一冊」は、実は何冊もある。 このブログは、そうしたを中心に紹介してきた。これに加え、どのように探し、どう読み、何を得て、どんな行動につなげたかをにした。タイトルはブログと同じ、『わたしが知らないスゴは、 きっとあなたが読んでいる』だ。 ここには、あなたにとっての「運命の一冊」を見つける方法を書いた。あなただけのスゴと出会うパーフェクトガイドだ。3行でまとめると、こんな感じ。 を探すのではなく、人を探す方法 お財布に優しく(ここ重要)、スゴに出会い、見合い、結婚する方法 (良書なのは分かってるのに、なかなか読めない)運命の

    『わたしが知らないスゴ本は、 きっとあなたが読んでいる』という本を書いた
    Nean
    Nean 2020/02/23
  • 1巻完結ラノベの傑作『MONUMENT あるいは自分自身の怪物』

    は、わたしの3倍くらい読むのだが、小説は、不思議なほどに被らない。お互い好き勝手に読み散らかし、海外、国内、ジャンルも選り好みしないものの、同じ一冊にたどり着いていた、ということはあまりない。それだけ小説という世界が豊穣なのか、夫婦ともども先鋭的に選書してるのかは、ご想像にお任せする。 そして、ごくたま~に、「これ、面白かったよ。あんたにも合いそう」というのが出てくる。長い付き合いだから、お互いの趣味嗜好は分かりすぎるほど分かっているから、面白さは保証されている。他の人はいざ知らず、少なくともわたしにとっては間違いないことは分かっている。「騙されたと思って読んでみ?」なんて駆け引きなしで読む。 結論:面白かった! なんでこれが1巻完結なの!? そう、巧妙な伏線&物語構成、ストライクゾーンど真ん中のキャラクターによる、「物語を純粋に楽しむこと」と、もう古典名作と言っていい小説映画を、上手

    1巻完結ラノベの傑作『MONUMENT あるいは自分自身の怪物』
  • 知性に普遍性はあるか『ランドスケープと夏の定理』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    「知性に普遍性がある」という発想がブッ飛んでいる。 ■ 知性定理 どんな宇宙であれ、同じ宇宙に存在する限り、同じ物理法則に従う(←分かる) 異なる宇宙の場合、プランク定数など基的な定数が違うかもしれないが、それに相当する定数は存在する(←分かる) それぞれの物理法則は、定数の変換や翻訳という手続きは必要なものの、対応関係があり可換である(←分かる) 知性の元となる思考や理論は、それぞれ物理法則から導き出される(←分かる) 変換や翻訳した結果、共有された物理法則から導き出される思考や理論に支えられた知性は、対話可能である(←分かる) 物理法則が普遍性を持つ以上、知性は普遍性がある(←分からない) つまり、世界や物理法則が共通である以上、知性の違いは表現の違いに過ぎず、遅かれ早かれ、あらゆる知性は普遍的なものになる、という理屈である。これは、いわゆる宇宙人に限った話でなく、動物やAIも含めた

    知性に普遍性はあるか『ランドスケープと夏の定理』: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
  • 世界文学全集の中の「日本文学」の割合は?: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる

    秋草俊一郎氏の「世界の中の日文学」という講演を聞いてきた[概要]。ともするとアカデミックな古臭さがつきまとう「文学」を、新しい斬り口から見せてくれる、たいへん興味深い講演でしたな。同時に、とんでもない間違いを、わたしがしていたことに気づかされた。 ■ 世界文学全集の必要性 そこに書かれている経験や感情を分かち合うことで、文学は、読み手の人生を増やす。一生を、二生にも三生にもしてくれる。ここが理解できないと、自分の経験だけを縁に、トライ&エラーのループに陥る。人生はオートセーブで、一回こっきりだけれども、「文学」がセーブポイントになる。 とはいえ、一人が一生に読める数は限られているし、星の数ある作品から何を読めばいいのか分からない。そういう悩める人のためにカノン(正典)はある、と考える。世界文学全集とは、世界の文学を編集したものであるだけでなく、文学の世界の入口にもなる。 たとえば、池澤夏

    世界文学全集の中の「日本文学」の割合は?: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる
    Nean
    Nean 2018/10/29
  • 人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』

    人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』 わたしの人間観を更新する一冊。 もっと正確に言うと、進化心理学・行動経済学・認知科学の研究を通じ、わたしが抱いている「人間とはコレコレである」人間観がアップデートされつつあることを教えてくれる。 書は、吉川浩満氏の論文・インタビュー集である。発表媒体によりモチーフは異なれど、テーマは「人間とは何か?」になる。「人間とは何か?」という問いかけを、「人間がどのように”見える”か?」という人間観にした上で、その変遷を、人工知能、認知バイアス、利己的遺伝子、人新世という様々な斬り口から掘ってゆく。 よくあるサイエンス・ノンフィクションと異なるのは、「(人が)どうなっているか」の科学的解説に、道徳哲学の「(人が)どうあるべきか」議論をぶつけているところ。おかげで、認知科学の進展を

    人間が「どうなっているか」と、人間が「どうあるべきか」の間で問いつづける哲学『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』
  • これが教養だ! 『これは水です』

    書店に行くと「教養」を謳う雑誌やの多いこと。 ひと昔前のマジックワード「品格」「大人の~」と一緒やね。来ソレが足りなかったり欠けていることを指摘して、その雑誌なりを「買う」ことで補完できるというレトリック。あるいはソレに価値を見いだしている自尊心をくすぐるテクニック。騙されるほうが馬鹿なんだが、わたしもよく騙される(レジまで騙されたら負け)。 つまり「教養」を人質に、コンプレックスを煽るビジネスなのだ。 エセ教養人の手口 「ビジネスリーダーに求められる教養」とか「人生を豊かにする教養」という惹句で、人間関係を円滑にしたり信頼関係を築くためのツールとしての「教養」が重要だという。で、よくよく聞いてみると、ただの雑学や豆知識だったりする。要するに、アイスブレイクや知的マウンティングに使える小話のことを、「教養」と呼んでいるにすぎぬ。 そうやって「教養人」を名乗り、まとめサイトやWikip

    これが教養だ! 『これは水です』
  • 『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇』はスゴ本

    ウィトゲンシュタインののなかで、これが最も分かりやすい&面白い(当社比)。 数学という存在を、人の知性の産物である「発明」と捉える人がいる。いっぽうで、人が見出した世界の質である「発見」と見なす人がいる。この議論は、[『神は数学者か』はスゴ]にて語ったが、いずれの場合にせよ、数学の限界が(仮に)あるとしたならば、それは人の理性の限界であることは了解していただけるだろう。なぜなら、「発明」であれ「発見」であれ、主語が人である限り、その限界も人に属するからである。 ウィトゲンシュタインの講義は、数学の限界を見極める一方で、数学の底(もともとの了解事項)を明らかにしてくれる。 数学の底? そんなのユークリッド幾何学やヒルベルトの基礎付けを見るまでもなく、「定義」と「形式」でしょうに(あるいはそこから定義づけられる公理系といってもいい)。書を手にするまでは、そう考えていた。だが、「発明」で

    『ウィトゲンシュタインの講義 数学の基礎篇』はスゴ本
    Nean
    Nean 2018/02/18
    《「人でない存在にとっての数学」から観察すると、世界はもっと豊饒に見えるという確信》。
  • 読書猿さんと対談した

    読書猿さんとお会いして、お話することができたので、さしさわりのない範囲でまとめる。 濃厚かつ一瞬の2時間だったが、学ぶヒントや学び続ける勇気、そして大量のスゴを教えてもらえるという、かけがえのない時間でしたな。フォレスト出版さん、読書猿さん、ありがとうございます。ブログやってて良かった! 自ら学ぶことを大切にしている人で、読書猿さんを知らない人はいないだろう。一言なら、哲人(てつじん)。すぐれた知性と見識の高さ、的確すぎる筆致と高高度な調査能力を駆使する、教養の化物である。古今東西のあらゆるを吟味し玩味し紹介するブログ[読書猿]の中の人で、メルマガ[読書猿]を発行しており、『アイデア大全』『問題解決大全』というスゴを著している。 お会いするまで、そんな人は実在しないと考えていた。読むのも書くのも質量ともども桁外れ、文献調査や公開情報を用いた分析が研究機関レベルで、得られた知見を、読み

    読書猿さんと対談した
    Nean
    Nean 2017/12/06
    “十進分類表”。
  • 「ご利用は計画的に」の本当の意味

    どのサラ金も「ご利用は計画的に」という。あれは「弊社のカード・ローンは、計画的にご利用ください」という意味ではない。あるいは「消費者」金融というナイスな名前から、つい「欲しいものを買うために、計画的に借りる」と解釈しがちだが、これも誤り。 「ご利用は計画的に」の当の意味は、「ご利用いただいたお金は計画的に返済していただきます」(反転表示)。つまり「限度枠ならどれだけカネを引っ張ってもいいし、それをどう使おうとかまわない。けれど返済だけはキチンとしていただくよ」ということ。計画的に「返す」のであって、計画的に「借りる」ワケではない。 だいたいサラ金から借りている時点で既に計画的じゃない。カンチガイしている人が借りるわけだ、街金から。信用枠なんて肩書きで自動的に決まるから、恣意的な要素は少ない。キレイなお姉さん(かもしれない融資担当)が親身になって応対してくれるのは「返し方」のほう。 しかし

    「ご利用は計画的に」の本当の意味
    Nean
    Nean 2017/11/29
    本の紹介ぢゃなかった/(^o^)\
  • 東大の科学がスゴい『科学の技法』

    東大の理系は、一年生から「科学の技法」を叩き込まれる。 『知的複眼思考法』を読んだとき、批判的に読み・考えるトレーニングを徹底させる東大の文系が羨ましいと思った。『科学の技法』を読んだいま、科学の技法をゼミナール形式で学べる東大の理系が羨ましい。 東大で始まった新しい試み「初年次ゼミナール理科」が凄い。 理系の一年生は全員必修で、1クラス20名の少人数を、教師+TA(ティーチングアシスタント)できめ細やかに指導する。学術的な体験(アカデミック体験)を通じて、サイエンティフィック・スキル(科学の技法)を修得することを目的としている。 この科学の技法が羨ましい。前半が「基礎編」で、あらゆる研究をする上で基礎的となるだけでなく、仕事にも必須なスキルが紹介されている。後半が「実践編・発展編」で、研究チームを意識できるようなゼミを「ラボ」として開講し、そこで基礎的な演習を行う(垂涎だらけなり)。 ◆

    東大の科学がスゴい『科学の技法』
    Nean
    Nean 2017/10/30
    @complex_cat さんのエントリも紹介されている。
  • 事実のフリした意見を見抜く、隠れた前提を暴く、核心を衝く質問をするトレーニング『国語ゼミ』

    「2週間でこの変更に対応するということだから、残業時間を増やすか、休日出勤するか、どちらにするか君のチームでまとめておいてくれ」※ などと言われると、すぐに詭弁センサーが動き出す。 「2週間でこの変更に対応する」とは、そもそも事実か。何の権限において、誰が、どのようなプロセスを経て決定されたものか。オマエの意見じゃないの? 「残業を延ばすか、休日出勤するか」とあるが、なぜ2択なのか。「対応しない」「品質を下げる」「要員追加」「対応版を後から出す」等は検討したのか。2択なのは、オマエの意見じゃないの? そして、オブラートに包んだ形で尋ねると、たちまち皮が剥がれる。客から電話で受けた要求を、進捗会議でそのまま伝えたら、部長がその2択を出してきたとのこと。オマエは御用聞きか! 実は、重要な問題は※そのものではない。※の中に前提が隠れており、その前提を明確にせずに議論の土俵に乗ってしまうのが、真の

    事実のフリした意見を見抜く、隠れた前提を暴く、核心を衝く質問をするトレーニング『国語ゼミ』
  • メタファーから解く時間論『時間の言語学』

    時間とは何か? 言語学からの腑に落ちる解答。「時間」について思考の奥底で抱いていた認識が暴かれる一冊。 アウグスティヌスは、この問題の質を端的に語る。「時間とは何か。人に問われなければわかっているが、いざ問われると答えられない」。「時間論」といえば、これまで物理学や天文学、哲学や心理学、社会学からのアプローチがあった。それぞれの分野での見解はあるのだが、著者はこれに疑義を呈する。 つまりこうだ。どの学問領域であれ、時間の「流れ」や「進行」を口にしながら、その方向を当然のように過去から未来へと想定している。ビックバンをはじめとして、時間の「矢」は未来へと向かっている―――ここから疑い始めている。そして、「時間とは何か」に直接答えるのではなく、「時間をどのようなものとして捉えているか」という観点から、時間の質に迫る。 著者はレトリックを専門とする言語学者。日語と英語の豊富な事例を駆使しな

    メタファーから解く時間論『時間の言語学』
  • おめでたいアメリカ人『暴力の人類史』

    ここでは、書の「嘘」を暴く形でレビューするので、検証しながら読んでほしい。上下巻で1400頁というボリュームとスケールのでかさで、無批判に鵜呑みにしちゃう方が大勢いらっしゃる。これから手にする方は、そんな一員にならぬよう、レビューの後半に道標を残しておく。 著者は、スティーブン・ピンカー。前著『人間の性を考える』において、あらゆる暴力は環境要因によるという通念に反し、人間には生得的な設計特性として、暴力的なものが予め備わっていると論ずる。『暴力の人類史』では、そこからさらに発展させ、人類の歴史のまぎれもない傾向として、その暴力性が減少していると主張する。 もちろん、昨今の犯罪報道や戦争報道を見る限り、「暴力の減少」とは程遠い印象を受けることは、著者も承知している。20世紀は戦争の世紀であり、今なお内戦や弾圧が起きている。ネットのアンケート結果も然り。「前史時代と初期の国家社会」や「19

    おめでたいアメリカ人『暴力の人類史』
  • 最も信頼できるのはブッカー賞『世界の8大文学賞』

    ノーベル文学賞や芥川賞、ブッカー賞などの受賞作品から「これは!」というものを選び、作家や翻訳家、書評家が全部読んだ上で実現した鼎談。おかげで積読山がさらに高くなる一方、わたしの偏見が解消された。 というのも、常々思っていた「芥川賞って新人賞なのに勘違いしている人いる?」が喝破されてたから。日最高の文学賞みたいに考えてる粗忽者は少なからずいる(ただし、これ読んでる人は該当しないはず)。だが、芸術性の高い作品に与えられる賞だと考えていると、書で足元をすくわれる。最近の傾向は変わってきているようだ。 普通なら、芥川賞は芸術性、直木賞はエンタメだと考えがちだが、東山彰良『流』をぶつけてくる。これは日語で書かれてはいるけれど、日になじみのない世界が描かれている。中国語を使ってポリフォニックな雰囲気を演出しつつ、言語的越境のような冒険が試みられているらしい。そういうものが平気な顔をして受賞して

    最も信頼できるのはブッカー賞『世界の8大文学賞』
  • 恐怖を科学する『コワイの認知科学』

    怖いとは何か? 怖さを感じているとき、何が起こっているのかを、脳内メカニズム、進化生物学、発達心理学、遺伝子多様性からのアプローチで概観した好著。 喜びや悲しみ、怒りなど、人の心は様々な情動に彩られている。なかでも「恐怖」は根源的なものであり、より生理的に近いように思える。怖いものをコワイと感じるから、危険や脅威から身を守り、生き残れてきたのだから。こうした漠然とした認識に、科学的な知見を与えてくれるのが書だ。「怖いもの」に対する脳内での反応や、恐怖の生得説・経験説の議論、怖さの種類や抑制メカニズムを、研究成果を交えながら解説してくれる。 たとえば、「ヘビはなぜ怖いのか?」の研究が面白い。もちろん、ヘビ大好きという人もいるにはいる。だが、一般にヘビは「怖い」ものと嫌われている。 いきなり「なぜ(why)」と問いかけると、聖書の原罪における役割や、ヤマタノオロチ伝説など、文化や哲学のアプロ

    恐怖を科学する『コワイの認知科学』
  • 『数学の認知科学』はスゴ本

    人の思考のうち、最も抽象的で厳密なものは数学にある。だから、過去から現在に至るまでの人類の思考のマップがあるとするなら、その全体像の輪郭は、数学によって形作られている。つまり、数学を調べることで人の思考の構造と限界が分かる。 一方、数学は具体的なところから始まる。「数を数える」なんてまさにそうで、10進数が一般的な理由は、10の指で数えたから。xy座標でy軸が量、x軸が時空的な変化に結び付けられるのは、重力により増えるモノは積み上がり、移動するものは横方向だから。指は10進数の、デカルト座標は時空間のメタファーであり、数学を調べることで思考の身体的な拠り所が明らかになる。 数学そのものは抽象的で厳密だが、これを理解する人は具体的で経験的な存在だ。『数学の認知科学』は、「人は数学をどのように理解しているか?」をテーマに掲げ、この具体と抽象のあいだを認知科学のアプローチで説明する。著者はジョ

    『数学の認知科学』はスゴ本
    Nean
    Nean 2016/08/30
    にゃぁ~(ΦωΦ)
  • 本を読まずに文学する『遠読』

    司馬遼太郎の『峠』に、「彫るように読む」という表現が出てくる。越後長岡藩家老・河井継之助の読書スタイルだ。一画一字、目に刻みつけるように読むやりかたで、わたしの知る限り、との距離が最も近い精読(close reading)である。原典とゼロ距離で向き合い、くりかえし味読・咀嚼し、心胆を練るような読書だ。 遠読(distant reading)は、その対立概念になる。著者の造語で、「野心的な読みはテクストからの距離に正比例する」と焚きつける。著者はフランコ・モレッティ、スタンフォード大学文学部教授でマルチリンガルで、ゴリゴリの文学読みで、膨大な文献を背景に煽ってくる。 つまりこうだ、いわゆるカノン(正典)を精読するだけで世界文学を語るには限界がある。コンピュータや統計手法を用いたデータ解析を行い、文学を自然科学や社会学のモデルでとらえ直すことができないか。そこでは、との距離こそが知を得る

    本を読まずに文学する『遠読』
    Nean
    Nean 2016/08/07
    瀬尾育生の「空中批評宣言」を何となく思い起こしたり。
  • 『野性の知能』はスゴ本

    大失敗したことがある。それは、ドーキンス『利己的な遺伝子』の「利己的」を誤解していたことだ。 タイトルから「利己的な遺伝子がいて、そいつが生物の行動を決定する」と思い込んでいたが、これは誤りだ。このでドーキンスが言いたかったのは、生物の行動様式を説明する際、遺伝子の自己複製というレベルからだと整合的に理解できるということ。「利己的な遺伝子」は説明のために擬人化されたメタファーにすぎない。分かりやすくするための擬人化の罠の顛末は[分かりやすさという罠『利己的な遺伝子』]で曝露しているので、教訓とされたし。 『野性の知能』は、擬人化の罠に囚われていないか問いかける。動物を観察する際、ヒトに似た属性の有無を探し、ヒトの基準で動物の行動を評価する。何かヒトに似た行動を取ったとしても、その行動を生んだ根源的なメカニズムまでがヒトと同じとは限らない。それぞれ異なる身体と神経系をもち、それぞれ異なる生

    『野性の知能』はスゴ本
  • 知の科学へようこそ『教養としての認知科学』

    知的システムと知能の性質を研究する認知科学の入門書。人はどのように世界を認識しているか? より知的な存在を作り出すことができるか? 「考える」とは何か? そのとき何が起きているのか? といった疑問を抱いている人にとって、格好の入り口となる一冊。 なぜなら、この領域は下記のごとく広範囲で学際的だから。むしろ、「知の科学」はつかみどころがなさすぎて、いったん扱える範囲に切り分け、それぞれの専門分野から光を当てないと、攻略すら難しい。 人工知能(ニューラルネット、コネクショニズム)★ 神経科学(認知神経科学、脳科学) 哲学  (心の哲学、認識論)★ 心理学 (認知心理学、進化心理学、文化心理学)★ 言語学 (生成文法、認知言語学) 人類学 (認知人類学、認知考古学) 社会学 (エスノメソドロジー、ナラティブ分析) 書は、青学・東大の人気講義を書籍化したもので、「知の科学」を多角的に紹介している

    知の科学へようこそ『教養としての認知科学』
  • 動いているコードに触るな『失われてゆく、我々の内なる細菌』

    プログラマの格言に、「動いているコードに触るな」がある。ビジネス環境の変化に合わせ、巨大なシステムを維持・改善していく上で、ほぼ原則といってもいい。 その意味はこうだ。長いこと複雑怪奇な状態なのに、なぜか正しく動いているプログラムに対し、不用意に手を入れると、思いもよらない不具合が出る(これをデグレードという)。一見冗長で、まわりくどく無駄なことやっているようなので、よかれと思って直す。すると、触った部分とは関係なさそうな別の場所・タイミングで、予想外の動作をする。結果、因果が特定できないまま解析が長引くことになる。きちんとリソースを充てて改善するならともかく、「なぜ上手く動いているか」が分からないまま改修するのは、非常にリスキーなのだ。 人体に常在し、ヒトと共進化してきた100兆もの細菌群を「マイクロバイオーム」と呼ぶ。このマイクロバイオームの多様性を描いた書を読むと、抗生物質の濫用に

    動いているコードに触るな『失われてゆく、我々の内なる細菌』
    Nean
    Nean 2016/06/09
    “近年の研究で、ピロリ菌は、胃食道逆流症を抑制し、結果として食道がんを予防することが明らかになった”。へぇ。